オ − ロ ラ へ の 招 待

ノルウエ−・ハシュタ ( 2000年10月7〜14日 )、カナダ・フォ−トマクマレ− ( 2001年3月21〜25日 ) の 2度にわたりオ−ロラ観測をしました。
  天候に災いされた日もありましたが、予備知識があればある程度高い確率でオ−ロラを見ることが出 来ます。 お粗末な経験ですが撮影ノウハウ予報の知識を ご紹介したいと思います。

1.オ−ロラのサンプル画像
  オ−ロラは基本的にはカ−テン状ですが、ぼやけたものやあまり動きのないもの、活発に動き回るものなど様々なタイプがあります。 いろいろなタイプのオ−ロラをご覧下さい。国内外のホ−ムペ−ジには多くのオ−ロラギャラリ−がありますので検索して下さい。
左上 1枚のみがノルウエ−・ハシュタでのもので他は全てカナ ダ・フォ−トマクマレ−でのものです。

2.オ−ロラの撮影
  オ−ロラの撮影は観測時季、観測地の気象条件によって大きく変わります。氷点下の場合特に注意が 必要です。

カメラ・電池
カメラ ・ 撮影時季の気温により対応も違ってきます。氷点下の場合、機械式カメラが良い、と解説されていますが、私の経験では −25℃位まではオ−トフオ−カスカメラでも問題ありませんでした。しか し予備として機械式カメラを持参すべきでしょう。
電池 ・ 低温での電池の寿命ですがリチュ−ム電池を使えば一晩 10本位の撮影であれば交換の必要はありませんでした。 予備電池は必携です。

レンズ
  全天に広がる弱い光のオ−ロラを撮るためには明るい広角レンズが必要です。F値は F 2.0以下が望ましく、広角レンズは やはり 28mm以下が必要で、画像でも分かるようにもう少し全体をカバ−するためには出来れば 24mm、20mmが欲しいところです。 魚眼レンズは全天が写りますが見た目が不自然で、これは好みの問題です。

フイルム
  フイルムの結露が一番問題でこれはしっかり対応しないとだめになってしまいます。カメラを防寒を してもフイルムの交換もあり効果はありません。対策は撮影中は勿論ですが撮影終了後、必ず防寒をして 部屋に持ち込み、数時間放置して室温になってから開放することです。寒さでフイルムが切れる場合もあ りますので携帯用暗室は必携です。
  問題はフイルムの種類ですが、これは個人の好みもありますが私はネガカラ−フィルムで 満足しています。オ−ロラは激しく動いていますので速いシャッタ−を切る必要があります。写真集やホ−ムペ−ジのオ−ロラの画像にはぼやけたものが多いの には驚きます。写っている星を見ればどのくらいの速さで撮ったかが分かります。ホ−ムペ−ジやパンフレットには 10〜60secとありますが、オ−ロラの微細な構造まで撮ろうとすると最大 5secです。レンズ の明るさにもよりますが 2〜3secで撮ろうとするとどうしてもフイルムの感度は ISO 800 が 必要になります。 ネガカラ−はラチチュ−ドも広くプリントでもカバ−出来ます。リバ−サルでは適正露出は期待出来ません。

露出
  撮影は三脚に固定し、レンズは無限遠 ( テ−プで固定 )、開放、マニュアルにセットしま す。そして問題は露出時間ですが、バルブに設定して正確な露出をするためにタイマ−が必要です。オ− トカメラの場合はリモ−トコ−ドによる電子音で正確な露出が出来ます。機械式カメラではレリ−ズが必 携です。懐中電灯は周囲の撮影中の人の迷惑になりますので使えませんから工夫が必要です。

私 の 推 奨 露 出
フイルムISO f 1.4 f 1.8 f 2.0 f 2.8 f 3.5
400 4〜6sec 6〜9sec 8〜11sec
800 2〜3sec 3〜5sec 4〜6sec 8〜11sec 11〜17sec

  参考に私の機材・撮影デ−タ− は
カメラ ・ ニコンF90X、ニコン FM10    レンズ ・ 28mm F1.8    フイルム ・ ネガカラ−ISO 800     リモ−トコ−ド ・ MC-20    電池 ・ リチュ−ム電池
他に三脚、懐中電灯、フイルム入れ替え時に使う大きめのバッグ ( 懐中電灯の光を漏らさないために必要 )
露出時間 ・ 明るいオ−ロラ ・ 2〜3sec、  暗いオ−ロラ ・ 3〜5sec、殆んどのものは 3secで撮りました。
  比較的明るくて動きの激しいものでは 1secのものもありましたがプリントすれば綺麗に写っています。最近はフイルムも良くなり ISO 400も 800もプリントしても殆ど差はありません。この露出時間は標準からはやや不足していますがオ−ロラの縞模様を撮るために 敢えて実行しました。 「1秒と3秒の比較」、 約30秒の 「長時間露出」 の画像を参考にして下さい。
  標準時間は SHOOTING THE AURORA BOREALISのデ−タ−を参考にして下さい。

防寒対策
  オ−ロラは気温とは全く関係ありません。厳冬期に出かける人がいますが、オ−ロラは春分・秋分の前後 2ヶ月の頃の方が活動は 活発です。北欧は 秋分を少し過ぎた10月上旬に行きましたから 10℃前後で問題ありませんでした。
  カナダは春分に行きましたから気温は−10℃前後と予想していましたが、結果は真夜中は −28℃ま で下がりました。初めての経験で初日は震え上がりました。これに懲りて 2日目は下はパッチ 2枚にズボン、その上に防 寒ズボンの計 4枚、そして 防寒靴が必要です。上は冬のシャツ 2枚、チョッキ、 セ−タ−に防寒コ−トの計 5枚、それに「使いすてカイロ」を 足に 2個、上は腕に 2個、胴体に 3個の計 7個つけました。流石にこれで 2日目以後は 3時間、凍結した湖上で全く寒さを感じませんでした。頭は耳をカバ−出来る帽子が必要です。防寒靴、 防寒着は現地で貸してくれます。撮影は夜 9時頃から真夜中 2時頃までです。

撮影地・撮影環境
  先ず撮影地は何処が良いかはオ−ロラベルトで分かります。しかし問題は天気で、晴天率の高い地域に行くべきです。 インタ−ネットの天気予報で大体のことは分かりますが、当たらないことが多く ( カナダがそうで、良い方に外れましたが ) 既に日程は決まっており当日がどうなるかは運次第です。 やはり確率としてはアラスカ、カナダ方面が晴天率は高いようです。
  次に月齢が気になりますが旅行社の日程でどうにもならないこともあります。満月は避けた方が良い のは事実ですが満月でも十分写りますから大丈夫です。但し雲がある場合は雲が写ってしまいますし月の位置の方が問題です。 「ノルウエ−・ハシュタのオ−ロラ」 を参考にして下さい。
  撮影環境は普通、旅行社がオ−ロラ撮影に適した場所を用意していますから問題ありませんが、色々な事情でそこまで行けない 場合もあります。 「ノルウエ−・ハシュタ」 では市街地のど真ん中での撮影となりましたが、レンズに直接光が入らなければ撮影は可能です。 カナダの 「カナダ・フォ−トマクマレ−」で は広大な凍結した湖上での観測で、暖かいコテ−ジもあり 最高の環境、かつ新月という好条件でした。

3.オ−ロラ豆知識
  オ−ロラの研究は人口衛星の出現により飛躍的に進歩したが電磁流体力学や宇宙物理学など難解なものが多く 膨大な研究成果にもかかわらずまだ未解明な部分があるそうです。
  オ−ロラについては多くの国内外のホ−ムペ−ジがあり、専門家の解説や宇宙の各種観測デ−タ−が公開されています。従って専門的な詳細な内容はそちら をご覧になっていただきたいと思います。

オ−ロラの発生原理
  オ−ロラの発生原理はひとことで云えば、太陽風 (プラズマ) が放電現象により地球大気と衝突してその時発生したエネルギ−の放出による発光現象である。
  オ−ロラの発生は太陽風そのものよりもむしろ太陽風磁場と地球磁場との相互作用に強く依存している。 太陽風磁場の磁力線が、太陽風によって反対側に吹き飛ばされた彗星の形をした磁気圏 の磁場と結合した磁場を太陽風が横切ることで 巨大な電力 (100万〜1億メガワット) を発生する。この電力 (100kv、1000万A) の一部がオ−ロラ放電に使われ、この放電により 荷電粒子が数キロ電子ボルトに加速され、超高層の大気の酸素原子や窒素分子と衝突して発光する。
  この高エネルギ−の粒子が原子に 衝突すると原子核のまわりを回っている電子の軌道が一段上がり、これが元の軌道に戻るためにエネルギ−を放出しなければならない。 このエネルギ−が光として放出される、というのがオ−ロラ発光の原理だそうです。
  詳細を知りたい方は「オ−ロラ・その謎と魅力」赤祖父俊一著、岩波新書、「オ−ロラ・太陽からのメッセ−ジ」上出洋介著、 山と渓谷社、などの書籍、および下記のホ−ムペ−ジをご覧下さい。

オ−ロラの色 ・ 形
  オ−ロラの発光原理は放電であり、高エネルギ−の荷電粒子の超高層大気への降り方によって色、形、強さが決まる。そして降ってくる場所が常に移動する ので渦を巻いたり波を打ったりする。
  オ−ロラの色は荷電粒子と衝突する原子や分子の種類と荷電粒子のエネルギ−の大小と超高層大気への進入の高度により決まり、衝突してから発光までの反 応時間によっても微妙に変わる。 高エネルギ−の粒子は低い高度まで進入し酸素原子は緑白色、窒素分子は青色に発光する。勢いのない粒子が大気の薄い上層部で 酸素原子と衝突すると赤色となる。この薄い赤色は肉眼では見えなくても写真のフイルムに写っていることが多い。これは人間の目よりも写真のフイルムの方が 赤に対する感度が良いためである。オ−ロラが活発になると下端にピンク色の窒素分子の発光が起きる。
  オ−ロラには雲と見分けが付かないような「ぼんやりタイプ」、カ−テン状の形がはっきりした「はっきりタイプ」、周期を持って明暗を繰り返す「脈動タ イプ」がある。 カ−テンには筋状 (レイ状) の縞模様があり局所的な電磁場の変動により激しく動いている。更に活動が増すと明るさも増え、ひだは反物を巻いたようになりブレ-クアップ (オ−ロラ嵐またはオ−ロラ爆発と云う) が起きる。 オ−ロラが移動するのは発光している原子や分子が移動するのでなく、シ−ト状の電子ビ−ムが移動して原子や分子と衝突する場所が 移動するのである。
  オ−ロラの基本的な形はカ−テン状である。これは電子ビ−ムが磁力線に沿ったシ−ト状であり、荷電粒子がこのシ−トの中で超高層大気の原子や分子と衝 突するからである。オ−ロラを見る角度と距離により 「カ−テン状」 「ア−ク状」 「渦巻き状」 「コロナ状」 などがある。
  オ−ロラの大きさは下端が 100〜115km、上端 400〜500km、南北の幅 500〜1000m、東西の長さ数 1000km、カ−テン枚数 1〜10枚である。

オ−ロラの見える地域
  オ−ロラは南極、北極で同時に発生しており夫々にオ−ロラ帯 (オ−ロラベルト) がある。地球の自転軸とは 11.5度ずれている 磁北極を中心にオ−ロラが最も良く現れるリング状の地帯は 「オ−ロラベルト」と呼ばれ、地磁気緯度65〜70度の範囲にある。
  日本では北海道が 0.1で 10年に1回の確率でオ−ロラが見えることになります。 低緯度ではオ−ロラの最上部しか見えないから酸素原子による赤色が見えることが多い。

4.オ−ロラの予報
  オ−ロラは予報出来るのか。 オ−ロラの活動には太陽風の速さ、太陽風磁場の強さ、太陽風磁場の方向の 3つが決定的に重要であり、太陽風磁場の方向が南を向いている時に発電力が最高になる。この 3つの量が予測出来れば予報も可能になるが、連続的に不規則に変化しているので予報は難しい。 しかし予報が出来たとしてもそこに長期滞在するか住まない限り有効に生かすことは出来ません。 しかしオ−ロラの知識があればある程度確率の高い日程を選ぶことが出来ます。
  1. 太陽黒点の活動は 11年周期で増減するがオ−ロラの活動に関与しているコロナホ−ルは数年遅れるので 2003年から 2〜3年が良いと云われています。そして太陽と地球の自転と 公転の関係で春分、秋分の頃が良く ( 厳冬期は寒いだけであまり良くない ) 、太陽の自転周期 27日の間に 2度 ( 1回の場合もある ) オ−ロラが活発になります。その期間は 7〜10日と云われています。 従って現在のオ−ロラの活動状況が分かればある程度推測が出来ます。
  2. 現在の太陽風の活動やオ−ロラの出現状況はNOAA (米国海洋大気局) にリアルタイムで公開されており、 太陽風の活動は 「太陽風の強さ」、オ−ロラの出現状況は 「AURORALMAP」 で見ることが出来ます。
  MAPで分かるように明るい強いオ−ロラは夜側の地域に多く発生する。 これは夜側が暗くて良く見える、ということではなく、地球磁場が太陽風に流されて夜側の磁場の弱い領域にプラズマが溜まりやすいからである。
  オ−ロラは終日出ているわけですから日が沈めば見えるわけで、早い時は7時頃から出始め、真夜中に 最高潮に達し午前 3時頃には静かになることが多いようです。
  その他色々なデ−タ−が下記ホ−ムペ−ジに公開されていますが、これを予報に結びつけるには専門的な知識が必要です。

5.オ−ロラ関係ホ−ムペ−ジ
  オ−ロラ関係の公的、私的の多くのホ−ムペ−ジが公開されています。   上記解説もこの中から引用しているものもあります。

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