東大阪市には華やかな並木は少ないものの、約150種類、23万本以上の街路樹が
植えられています。
これほどまでに多種多様な樹木がたくさん植えられている都市は全国的にも珍しく、
東大阪の街路樹は「都会の植物園」と言っても
過言ではありません。
そんな東大阪市を流れる長瀬川沿いでは、たくさんの種類の樹木を見ることが出来ます。
また、遊歩道も整備されていて、四季折々の樹木の姿を観察することが出来ます。
それらの樹木は、大変ユニークな生き方と歴史を持ち、空気をきれいにしながら人間の
生活を守っています。
今回は、菱屋西公民館の地点から、延命寺の前を通って大阪樟蔭女子大学沿いに歩き、
近鉄奈良線と交差する約1kmに見られる
街路樹約16種類を紹介します。
紹介ルートに見られる樹木の位置を下記に示しましたので、併せてご覧ください。
紹介の街路樹ウオーキングがきっかけとなり、身近な樹木に少しでも興味を持って
いただければ幸いです
(ここをクリックでマップが拡大して見れます)

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長瀬川街路樹マップ
長瀬川、菱屋西小学校〜近鉄奈良線

フジ
菱屋西小学校の前の遊歩道には藤棚が」あり、太いフジのつるが巻き付いています。
このツルは丈夫な幹よりも伸びるのが早く、光を求めて上へ上へと伸びる熱帯植物の特徴を持っています。
縄文時代、日本列島は温暖で、亜熱帯のジャングルにおおわれていました。
フジはそんな古代の原生林で大繁殖し、その後、花の散りゆくさまが古代の人々に愛され、都で植えられるようになりました。
花が風に吹かれて散る「吹き散る」が知事待って、フジと呼ばれるようになりました。

班入りアベリア
藤棚沿いには、小さな班入りの葉が茂っています、アベリアの班入りの品種で、白い上品なはなを咲かせます。
なかなか手に入らない品種でしたが、ここではなぜか、たくさん植えられています、現在では、昔より入手しやすくなりましたが、先日、阪神百貨店
の花屋さんでは「大変珍しい班入りアベリア」として売られていました。

サクラ
秋が深まると、サクラの葉は赤や黄色に美しく紅葉し、葉を落とします。
植物にとって、葉を赤くするのは黄色くするより難しく、葉を真っ赤にするのは最も進化した植物にしか出来ない芸術です。
落葉するとサクラは幹のある皮目穴をいっぱいに開いて、呼吸し始めます。葉を出すより先に花を咲かせるので、落葉中も呼吸する必要があるのです。
秋が深まると、長瀬川沿いのサクラの呼吸穴はとても大きく、きれいに並びます。ぜひ見つけて見て下さい、この呼吸穴は排気ガスも吸い、空気をきれいにしてくれます。
長瀬川沿いのようなきれいなサクラの材は彫刻材、樹皮は咳止めの漢方薬となります。

アベリア
純白の美しい花を5月から11月にわたって咲かせている低木がアベリアで、としの昆虫の貴重な蜜源になります。
アベリアの葉は、暑いときは繁茂して気温を下げる効果があります。
夏の暑いときにアベリアのそばを通ると、涼しく感じるのはそのためです。ちなみにアベリアはイタリアで人為的に作られた交配種なので、
本来は種をつけません。しかし、長瀬川沿いのアベリアは種を付けるようになりました。「命は道を見つける」のです。珍しいアベリアの種を探してみましょう。

アオギリ
長瀬川沿いのアオギリには、様々な形の剪定こぶが見られますこれは偶然作られるのではありません。アオギリは枝を切られると、もう切られないようにこぶを作るのです。
そのこぶが大きいだけでなく、変わった形をしていると、親しみがわいてきて切られないでしょう。これがアオギリ流の切られないための戦略です。
また、アオギリはチョコレートやココアの原料となるカカオの仲間であり、種はタンパク質や脂肪・カフェインを多く含むので、戦時中の食糧難の時はコーヒー豆の代用とされました。
幹は緑色がかって、なかなか腐りません。そのため、棺桶の材や琴に利用されました。葉はリュウマチの薬になります。

イタヤカエデ
長瀬川沿いには、イタヤカエデという珍しいカエデが植えられています。この葉は糖分を多く含むので、虫によく食べられます。長瀬川沿いのはもよく虫に食べられています。
イタヤカエデはカナダの国旗に描かれているカエデの仲間で、樹液からメープルシュガーがつくられ、ワッフルやホットケーキにかけるシロップとなります。
材は木製のハーモニカやバイオリンとして使われました。

ツツジ
ツツジはやせ地でも虫がつかず、葉や花が密集してつき、美しい景観を生み出します。この秘密は、葉や花に毒が入っているので害虫がつかず、根にすむ微生物が土の中の養分を集めるのできれいな花を咲かせるからです。
高山の岩場にツツジが咲いているのも同じ理由です。長瀬川沿いのツツジも、毎年美しい花を咲かせています。

シャリンバイ
着物などの日本文化の豊かな色彩は、植物に由来するものが多くあります。女性の憧れの着物である大島紬の染料となった木がシャリンバイです。
シャリンバイは植物5月にウメのような花を咲かせ、晩秋に黒紫色の果実をつける低木です。シャリンバイ(車輪梅)という名は枝や葉が車輪のように放射状に出て、花がウメがに似ていることに由来します。
大島紬の染色の技法は、奈良時代の遣唐使を通じて西方からもたらされたものです。シャリンバイで染めた大島紬は日本の原生林とシルクロードからの染色技術の出逢いから生まれた「日本の伝統文化」と言えるでしょう。
そんな大島紬の果実が長瀬川沿いにたくさん植えられ、空気をきれいにしています。

ユキヤナギ
大阪平野の歴史は洪水の歴史でもあり、そのたびに河岸は激しい流れにさらされてきました。そのため、昔の人々は洪水で堤防が壊されないように、川沿いにユキヤナギを植えました。
ユキヤナギは河岸の岩場で生育し、根が岩の割れ目にしっかりと張るので、洪水でも流されません。やわらかくしだれた枝は水の力を逃がすので、強い流れで折れるのを防ぎます。
ユキヤナギは春になると名前の通り、ヤナギのようにしだれた枝が、まるで雪をかぶったように花で埋まります。そして、生き急ぐように、4月に種をつけます。3月にさくらにさきがけて花を咲かせ、
4月には種をつけるのは、洪水の起きる梅雨が始まるまでに子孫を残すためなのです。
ユキヤナギは春に開花・結実した後、夏の間は洪水にひたすら耐え、人々を守ってきました。東大阪市でもユキヤナギは川沿いに植えられ、毎年春になると美しい花を咲かせています。

ツバキ
ツバキは古代日本の原生林をつくっていた常緑照葉樹です。ツバキという名は神話に登場する神々の言葉(ツバ)宿る木「ツバノキ」に由来し、その人知を超えた力によって、大きく鮮やかな花が咲くと考えられました。
そんな神の宿るツバキを二代将軍徳川秀忠が江戸城内に植えて鑑賞したことから、鑑賞花木として全国に広まりました。油をたっぷりと含む大きい果実は食用油や頭髪油、花は滋養強壮や健胃・整腸の漢方薬として、葉は傷薬、
材は杖や箸・木魚として用いられました。
古代の人々にとって、ツバキは信仰の対象であるとともに、神からの貴重な自然の恵みだったに違いありません。長瀬川沿いのツバキも、冬になると美しい花を咲かせています。

ハナミズキ
ハナミズキはアメリカを代表する花木で、この木の材からカウボーイの刻みタバコを入れるパイプがつくられました。このパイプの木は、明治時代、日米の平和のシンボルとして当時の尾崎行雄東京市長に送られました。
現在、その子孫が平和への思いとともに、街路樹として全国に植えられています。大阪樟蔭女子大学前では、ハナミズキが赤い果実をつけると、野鳥がよく食べに来ます。遠くからでも赤色がよく見える鳥の習性を利用した、
種を広げる戦略です。

ザクロ
街路樹の果実は、野鳥の貴重な餌となります。秋になると、長瀬川沿いに訪れる野鳥に大人気なのがザクロの果実です。ザクロはギリシャ神話にも登場する樹木で、果実で銅鏡を磨くために、平安時代に中東〜北アフリカ
から渡来しました。
また、古来、果実はデザートやジュースとして、花は止血剤として、樹皮はサナダムシの駆除剤として重宝されました。

クチナシ
大阪樟蔭女子大学の前の遊歩道沿いに植えられている低木がクチナシです。クチナシは初夏に純白の花をつけ、秋に黄色い果実をつけます。花には上品な芳香があり、中国ではユリ・キク・スイセンなどとともに、天下の
名香花「七草」の一つに数えられます。
クチナシという名は、果実が秋になって熟しても口を開かないので、「口無し」と呼ばれたことに由来します。将棋盤や碁盤の足は、勝負に傍から口出ししないようにという意味を込めて、クチナシの果実をかたどっています。
古来、果実は、口内炎・のどのはれ・解熱・きのこ中毒などの症状に効能があり、漢方薬として重宝されてきました。
万能の漢方薬から転じて、果実の黄色い色素が邪気を払うとされ、飛鳥時代から黄色染料や着色料として使われてきました。現在でも、たくわんやアイスクリーム・清涼飲料水の着色にはクチナシが使われています。
そんなクチナシは乾燥と寒さに弱いので、長瀬川沿いのような都会の川沿いは、絶好の生息地になっているはずです。

ヒイラギナンテン
ヒイラギのようなギザギザの葉と、ナンテンのような黒っぽい果実が特徴的な低木で、大阪樟蔭女子大学のまえに植えられています。原産地の中国では、解熱・解毒の薬や黄色の草木染に使われました。
江戸時代初期に薬用植物として渡来した樹木で、ジメジメとした場所を好みます。ネズミにはこの葉トゲを恐れて逃げてしまうことから、軒先によく植えられました。
食中毒菌やダニを運ぶネズミから人々の健康を守るためには、そのまま植えておくことが、薬にするよりも効果的だったのです。

キンモクセイ
秋に小さなオレンジ色の花を無数に咲かせる。雌雄異株であるが、日本では雄株しか入っていないので結実しない。雄しべが2本と不完全な雄しべを持つ。
キンモクセイの花は甘めでしっかりした強い香りであることから、日本において汲み取り式便所が主流で悪臭を発するものが多かった時代には、その近くに植えられることもあった。
その要因から、香りがトイレの芳香剤として1970年代初頭から1990年代前半まで主流で利用されていたため、一部年齢層においてはトイレを連想させることがある。

クスノキ
大阪樟蔭女子大学(樟徳館)から張り出している大きな木がクスノキです。クスノキは古代日本の原生林をつくっていた常緑照葉樹で、昔から「くすし木(人知でははかりしれない木)と呼ばれ、神の宿る木
として大切にされたので、現在日本各地で巨樹となっています。
長瀬川沿いでは樟徳館前にクスノキの巨樹が見られます。トトロがすむ巨樹のモデルもクスノキです。葉や枝には樟脳が含まれ、洋服ダンスの虫除けに使われました。
材にも防虫効果があるので、古くから丸木舟や神社建築・仏壇に使われました。小さな虫が皮膚の中に入ることによっておこる皮膚病の薬にもなります。
クスノキが長寿で巨樹となり、鳥が好んで巣をつくるのは、このような防虫作用があるためです。「東大阪市の木」であり、東大阪の街路樹を代表する樹木です。

アオサギ
河川、湖、池沼、湿原、干潟、水田などにせいそくする。非繁殖期には単独で生活するが、小さな群れをつくることもある。
食性は動物食で、魚類、両生類、鳥類の雛、小型哺乳類、甲殻類、昆虫などを食べる。水辺で待ち伏せたり、水辺や浅瀬を徘徊しながら獲物を探す。
獲物を発見すると、素早く頸部を伸ばし捕食する。水深の深い場所では、体を水に浮かべて泳いでいることがある。

コイ
コイは体大きくて見栄えがするため、「コイが棲めるほどきれいな水域」というきわめて安直な趣旨で川やダムに放流されることが多い。
しかしコイはもともとBOD値の高い湖沼や河川を好んで住処とする種で、低酸素環境に対する高い耐性がある。
これは、生物界における一般的な基準からすると、他の生物の嫌う水質の悪い水域にしか生息出来ないことを意味する。

カメ
ペットとして飼育されていたものが川に流され、それが住み着いたと思われる。

カルガモ
春になると親子で泳いでいるのがみられ、遊歩道をウオーキングしている人たちの人気ものです。
一度訪れられてみてはいかがでしょう。
取材にご協力頂いた方…東大阪大学こども学部:梅田真樹准教授さま、東大阪市都市整備部みどり景観課さま
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