第132回 「作家と画家の仕事場巡り」

 開催日時:2017年 10月14日(土)10:30 
 集合場所:西武新宿線 中井駅
 

  • コース:中井駅→林芙美子記念館→薬王院→おとめ山自然公園→佐伯佑三アトリエ→中村ツネアトリエ記念館→目白庭園→目白駅 

  • 約5.5km 歩行:約12,300歩 参加者:15名 解散14:30     

  

報告: 木村 

更新:2017.10.16

前日から朝方までの雨が集合時間には止みました。参加の方に晴れ男晴れ女が居たお陰かと思われます。15名の方々が参加されました。今回は新宿区下落合。大正末期から昭和初期にかけて活躍の作家、画家が集った所として、その面影が残る町の散歩です。
 西武新宿線中井駅を出発して「放浪記」で時代の売れっ子作家となった<林芙美子が住んでいた旧邸>へ。戦時中の建築にしてはロフトあり、檜風呂あり、水洗トイレ付きという高級住宅だったとのこと。この家で数々の作品を執筆したが、僅か48歳にして心臓麻痺で亡くなった。
 続いて鎌倉時代の創建という真言宗の古刹<薬王院>。奈良長谷寺の末寺で東長谷寺とも呼ばれ牡丹の花の名所として知られる。
 そしてお昼は<おとめ山自然公園>。旧陸奥中村藩相馬家の台地の斜面を利用した池泉回遊式庭園跡でナラ、クヌギなどの広葉落葉樹が生い茂り夏はホタルが飛び交う。「御留山」と書き江戸時代は将軍家のお鷹場で立ち入りを禁じたので「御禁止山」とも呼ばれていた。霧雨がやや小雨になったが、四阿での楽しいお弁当となった。
 食事後はアトリエを巡る。<佐伯祐三アトリエ>は大正九年に銀座の象牙商の娘米子と結婚し、同十二年、パリに移るまでの新婚生活を過ごした旧居跡。ヨーロッパの風景に惹かれて描いた代表作『リュクセンブール公園』は有名。移り住んだパリで「郵便配達夫」など数々の作品を制作するが喀血し、こころの病に侵されてわずか30歳でこの世を去った。
 佐伯祐三が師として仰いだ<中村彝(つね)のアトリエ記念館>。中村彝は軍人を目指すも17歳で結核となり療養のため訪れた千葉館山で風景を写生、洋画家を志す。明治42年に文展入選、頭角を現す。モデルとなった恩人の娘との恋愛に反対され下落合のこのアトリエにこもる。多くの作品を制作するも喀血のため37歳の若さで亡くなる。二人の名画家は期せずして同じ病に侵されながら数々の作品を残し駆け抜けて逝った。美人も天才もやはり薄明なのだろうか。
 最後は<目白庭園>。池を配した回遊式和風庭園で長屋門や築地堀の内に数寄屋造りの茶室「赤鳥庵」がある。その名の由来は大正7年、作家鈴木三重吉によってこの地で創刊された児童雑誌「赤い鳥」にちなんでいる。三重吉は夏目漱石の門下生で情緒的な短編小説「千鳥」で文壇に登場。「赤い鳥」には三重吉・芥川龍之介・菊池寛などが童話を、北原白秋・西条八十らが童謡を載せている。
 新宿区から豊島区へのわずか5.5kmほどの曇天ながら傘いらずの散歩でした。参加頂いた皆様、お疲れさまでした。
 
次回は11月25日(土)「迎賓館から神宮外苑」です。


                                報告:木村   写真:八代・楢原    編集:楢原

   

薬王院にて

中村ツネの自画像と共に



Sice.2003.01.01 counter

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