産官学連携プロジェクト支援

最先端技術 分野、特にナノマイクロ加工技術分野で,今尚 活躍される
松愛会 高槻支部会員 芦崎重也さんを紹介します。
芦崎重也さんは 昔も今も最先端最重要技術の開発という分野 で光り輝いておられる。


1972年、NHK放送技術研究所の要請に応じて、松下電子工業が世界初の高精細度カラーブラウン管を開発した。ハイビジョンテレビの元祖といえる。若き 日の芦崎さんは、その研究開発に没頭されたが、偶然180度発想を転換。シャドウマスクの光学リソグラフィーの光源をドーナツ形状にして非常識なぐらいに 大きくすると蛍光面素子を従来の1/4以下に微細化できることを発見。関連会社の支援を得て、カラーブラウン管の画素密度を4倍にする製法技術の開発に成 功。同年、科学技術庁長官賞に輝かれた。

1988年 米国松下電子工業設立から10年間 現地経営を兼務。1995年 米国プラズマコ社の買収に積極的に関与。現在のパ ナソニックプラズマテレビの隆盛に貢献された。

2000 年から、技術移転機関TLO兵庫の非常勤職員に。 関西学院大学、兵庫県立大学、神戸大学の半導体技術、ナノテクノロジーの研究成果の特許を出願する助け 人と産官学連携プロジェクトの仲人役をされている。これは経済産業省と文部科学省が大学の自立と起業家のベンチャービジネスを支援するために、企業のOB にボランティアでの参加を要請したのに呼応されたもの。

その内容は、イオンビーム・電子ビーム超微細加工、次世代半導体基板SiC(シリコンカーバイド)、カーボンナノチューブの超大 型薄型テレビFED,液晶バックライトパネル、環境汚染物質超小型分析器など多岐にわたる。

  
フランス、リ ベール社への特許譲渡に調印された代表の両者(左:リベール社 社長  右:関西学院大学 理事長) 翌日 プレス 発表された内容を報じる主要各新聞の記事

2006年8月30日 主要各紙が数10ナノ・メートル(ナノは10億分の1)の単位で、半導体を 立体加工できる技術を関西学院大学が開発し、フランスの半導体装置メーカーに特許を譲渡し、共同研究を進め、装置の製品化を目指すと報じた。
芦崎さんは産官学連携コーディネーターとして、関学の金子忠昭教授の研究内容を、この3年間に20件の特許に仕上げて出願された。その内の4件が業界最大 手の仏国リベール(RIBER)社との契約に関する特許で、ナノサイズの電子ビーム微細加工技術という訳である。
  
リベール社へ 特許譲渡した電子ビームマスクレス微細加工方法の原理の概念説明図 リベール社へ 特許譲渡した電子ビームマスクレス微細加工方法の工程の概念説明図
  
リベール社へ 特許譲渡した電子ビームマスクレス微細加工立体構造体の一例を示す概念図 イオンビーム と液相自己成長を組合わせた次世代微細立体構造体の本命と期待される新技術概念説明図

さらに重要なのは、残りの16件の特 許『SiC単結晶液相エピタキシャル成長法』関連で、これは『世界的発明になる公算が大きい』という。
現行のSi(シリコン)よりも、低電力損失、高耐圧、高温動作可能という優れた特性を持つSiC(シリコンカーバイド)は次世代パワーエレクトロニクス半 導体材料の本命であり、これらの特許は、SiC基板製造技術の確立を目指してきた研究成果なのだ。これが実現すれば、低コストで高品質のSiCパワー素子 の開発につながり、空調・照明・情報機器・自動車・家電製品などの消費電力の節減と熱損失の低減が期待できる。

経済産業省産 官学連携 平成18年度プロジェクトに採用されたSiC基板液相エピタキシャル(LPE)成長法
@半導体Siウエハーに取って代わる次世代SiCウエハーの特徴説明図

経済産業省産 官学連携 平成18年度プロジェクトに採用されたSiC基板液相エピタキシャル(LPE)成長法
ASiC基板製法の従来技術(右表)に対する新開発LPE法(左表)の優位性比較説明図

京 都議定書の目標達成を迫られている日本の経済産業省が、環境と経済の両立のため、省エネルギー技術を求めていたが、この関学の先進的技術に着目し、その素 晴らしさを認めた。傘下のNEDO(新エネルギー産業技術総合開発機構)より、今後3年間に約3億円の研究開発費を受け、民間3社も加わり、2006年9 月から新しい産官学連携プロジェクトが実働を開始した。
     
X線リソグラ フィーLIGA製法によるナノサイズ立体マシン(MEMS)加工技術
          (兵庫県立大学 服部正教授)

@MEMS加工技術を用いた超ミニカーの写真
X線リソグラ フィーLIGA製法によるナノサイズ立体マシン(MEMS)加工技術
          (兵庫県立大学 服部正教授)

AMEMS加工技術の体内検診カプセル構成概念図

芦崎さんは、今このプロジェクトの支援に全力投球されている。どうか燦然と輝き続けて下さいますよ うに。3年後が楽しみだ。
『良きひとに出會へることのありがたし 良きひとは支ふ蒼穹の芯を』(前  登志夫)

文  : 辰巳 寛康
写真 : 奥村 博昭




《 完 》
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