☆第52回 かにグルメ日本海冬の旅in 香住

平成23(2011) 224()  参加者42

今年も好評“かにグルメ”でスタート!

本場香住で「松葉ガニフルコース」を満喫し、「新余部橋梁」からの絶景に歓声

真心の酒「香住鶴」の酒蔵を見学し、無料・有料の銘酒試飲で陶酔

「かに市場」で日本海冬の幸ショッピングを楽しむ



冬ながら 春のとなりの ちかければ 中垣(なかがき)よりぞ 花は散りける

清原深養父(きよはらのふかやぶ) 古今和歌集 巻19-1021

≪ まだ冬だというのに、春がすぐお隣までやって来ているので、

垣根を越えてわが家の方へ、はらはらと花が散ってまいります ≫

 暖房設備が整った現代でも、2月の声を聞くと、あゝもうすぐ春だ!という気持ちになる。ましてや昔の暮らしでは、寒さに耐えてやっと迎えた2月、風に舞う雪を桜の花びらに見立てて詠んだ気持ちがよくわかる。

 今年は寒波の連続で、「平成18年豪雪」以来の大雪と言われていたので、参加者も少なく、日本海の寒さにも悩まされるかと思っていたが、近年にない大勢の参加で、昨年同様3月下旬の気温。またしても春の旅になった。
 今回は、JRに乗り換え余部橋梁を渡ることもあり、旅行会社の今回の旅の責任者が添乗して下さることになった。さらに、バスは買ったばかりという新車。ウッド調仕上げの床は通路と面一でリビング感覚。気分も身体もリラックスして出発進行!
 香住は近くて遠い所。高速を和田山で下りてからが長い。着いたら少し早い昼食となった。

昼食&総会

 本日の昼食は昨年10月に、世界ジオパークに加盟認定された「山陰海岸ジオパーク」の中心地、香住海岸の
“かに八代”。 隣接する香住漁港に水揚げされた松葉ガニのフルコースを堪能する。

元気に声をそろえて、乾杯! (◇)

         

      ゆで姿カニ                      多彩なカニ料理

  

   満艦飾のテーブル (◇)

かに八代(はちだい)は市場直営の食事処として、地捕れの新鮮な魚介類を提供すると評判の店。茹(ゆ)でた松葉ガニ1杯を筆頭に、カニ刺し・焼きガニ・カニ味噌・カニすきと多彩。カニを美味しく頂くには、紳士も淑女も手づかみで豪快に!

   今後の例会内容の説明 (◇)

 松葉ガニのフルコースを堪能した後、年初恒例の総会を開く。

①代表から昨年の反省と今年の方針、会員のみなさまへのお願いなどのお話。

②会計担当の会計報告及び会計監査担当からの監査報告を経て、平成22年度の会計報告を満場一致で承認。

③今年計画している例会の内容について説明&フリートーク。

  ★53回:5月26日(木)「奥琵琶湖周遊と渡岸寺十一面観音拝観の旅」
  ★54回:9月29日(木)「丹後ちりめんと伊根湾めぐりの旅」
  ★55回:11月24日(木)「吉備津神社・倉敷美観地区散策の旅」
 和やかに話が弾むうちに総会をお開きにし、午後の観光に移る。

まず、同経営の「かに市場」に立ち寄る。添乗員さんが、かに八代のお客だよ! と大音声。それに呼応するように大安売り・大特価の呼び声。市場が一気に活気づく。

先ほど味わった美味を家族にも! と松葉ガニを求める方。 新鮮な魚介類や水産加工品を買いこむ方。 気が付くと他の観光バスが数台来ていた。やはり評判の店なのだ。

【餘部駅&余部橋梁

 「かに市場」から直ぐのJR香住駅に向かう。古里を想い出すような小さな駅だ。キップは添乗員さんが手配してくれていたので助かる。

 ここから山陰本線を西に向かう下り列車で、浜坂方面になる「餘部駅」へ行くわけだが、次の鎧(よろい)駅を経由し短いトンネルを抜けると余部橋梁、渡り切った所が餘部駅。わずか10分ほどの列車の旅になる。
 文芸クラブ例会52回目にして初めて列車に乗る。ディーゼル列車はなんだかバス以上に旅心を弾ませ、出発までの間、車掌さんと会話を楽しむ。
 今日は冬の通例とは逆で、太平洋側は曇天ないし雨天だが日本海側は快晴。空も海も青く、遠くまで見渡せる。土地の人は見向きもしないが、名にし負う香住海岸の絶景。カメラに撮り、目に焼き付ける。
 あっという間に餘部駅到着。浜坂方面に向かい、右側に片面ホーム。駅舎はない。橋梁架け替えに伴いホームの位置も変わり、新しいプラットホームになっている。
 明治の鉄道敷設の際、当時の土木技術では長いトンネルは難しく、出来るだけ山に登って短いトンネルにしたので、餘部駅も高い所にある。それゆえ素晴らしい眺望だが、集落までは40mも下りなければならない。橋上駅にするだけで、やれエスカレーターだ、エレベーターだと騒ぐ都会人には考えられない不便さだ。
 

      餘部駅から新余部橋梁を望む        旧橋(愛称:余部鉄橋)の鋼材で造ったベンチ

 さらに驚くことは、明治45年に開通してから、昭和34年まで駅さえなかったことだ。頭上の鉄橋の騒音に日夜悩まされ、様々な落下物に脅えて暮らす余部集落の住民が、いざ山陰線利用となれば、列車の合間を縫って徒歩で余部鉄橋を渡り、トンネルをくぐって鎧駅まで行かねばならなかった。
 悲願の餘部駅設置には、地元住民が国鉄に強く働きかけたり、小学校児童が県知事に駅設置を願う手紙を書くなどの行動が展開された。
 駅建設の際は住民も駅造りを手伝い、その様子を描いた壁画がホームの傍に立てられていたそうだが、新橋梁建設工事開始後、周辺案内板等と共に撤去され、残念ながら見ることはできなかった。

   日本海の冬とは思えない青空のもとで (◇)

  新余部橋梁を背に (◇)

 些末(さまつ)なことかもしれないが、駅名と地名の「読み」は同じだが、「漢字」は違う。地名は「余部」、駅名は「餘部駅」である。ここの駅は昭和34年の開業だが、すでに昭和5年に開業した姫新線(きしんせん)の余部駅(よべえき)との重複を避けたためとされている。
 それにしても、よくあるように、令制国名をつけた「但馬余部駅」とせず、旧字体で重複を避けたことに喝采を贈りたい。
 

        餘部駅から余部集落への九十九折

 九十九折40m下ると集落になる。好天で暖かいから、のんびり、ゆっくり、各々土地の方と挨拶を交わしたり、
昨年8月に新橋梁になってからの状況を尋ねたりして、バスの待つ橋梁下まで歩く。

    新余部橋梁を頭上に (◇)

 旧橋梁時代の問題点として、①定時制(強風による遅れや運休)。 ②騒音。 ③落下物(鉄道部品・雨水・つらら・氷塊・雪庇・ガラス・空き缶・自殺者)。などがあった。
 余部鉄橋といえば、昭和611228日の悲惨な列車転落事故がある。事故以来、風速による運行規制が厳しくなり、25m/sから20m/sになった。 そのため、日本海に強風が吹き荒ぶ冬季の遅延・運休が大幅に増加したが、新橋梁では透明アクリル製の暴風壁で風速30m/sまで運行可能になった。
 騒音については、新橋梁がコンクリート製になったことに加え、橋梁上にバラストを敷いたので大幅に改善されたはずだ。実際、土地の方の話では、以前は音で列車が通ったことがわかったので、時計代わりになったが、新橋になってからは、いつ通ったか分からない、仕方ないので時計を買った。と冗談を言って笑わせてくれたそうだ。
 また、落下物対策としては、20年確率の積雪量を想定した、貯雪スペース構造を採用したとある。新橋梁は旧鉄橋に比べ橋の幅が2mほど広くなっているのはそのためだろう。

 コンクリートの見るからに頑丈そうな新橋梁は、旧橋梁時代の問題点を大幅に改善してくれたが、朱色に塗られた旧鉄橋のような暖かさは伝わってこない。

 私が余部鉄橋を認識したのは、昭和56215日から1ヶ月間放送された、NHKのドラマ『夢千代日記』である。
主人公の夢千代は、広島に原爆が投下された時、母親の胎内にいた被爆二世。原爆症で余命2年と宣告されている。
 逃れようのない運命を背負った夢千代を軸に、吹き溜まりのように集まってくる人達の人間模様を、山陰の冬景色を挟みながら物語は展開していく。主演・吉永小百合の好演もあってか、翌年『続夢千代日記』、その2年後『新夢千代日記』と続き、三部作になった。
 三部とも冒頭は、夢千代が原爆症の治療に神戸の病院へ行った帰り、列車が余部鉄橋にさしかかった車内から始まる。
 遠くから見ると、高さ40mの鉄橋は何とも頼りなげで、吹き付ける雪に耐えている姿が夢千代と重なり、その向こうに広がる日本海の闇が、謎めいた奥深い人間ドラマを期待させ、一気に夢千代ワールドに引き込む。
 余部鉄橋を冒頭にもってきたのは、原作・脚本の早坂暁だろうけれど、コンクリートの鎧を着た新余部橋梁だったら、恐らく別の場所を冒頭シーンに選んだことだろう。

【酒蔵見学&試飲

 余部から香住に戻り、山間部へ向かうと、矢田川の清流と豊かな自然に包まれた、真心の酒「香住鶴」の酒蔵・福壽蔵がある。 ここでは現存する酒造りの技法の中で、最も伝統的造り方の「生酛(きもと)造り」をはじめ、最新の設備を駆使して、普通酒から特定名称酒までの酒造りが行われている。

   香住の銘酒「香住鶴」の福壽蔵の前で (◇)

 担当の方が酒造り現場を案内し、詳しく説明してくれた。清潔で明るい現場に、合理的な設備、床から天井までの巨大な仕込槽など、工程ごとに歓声があがる。
 

        懇切丁寧な説明 (◇)                 1階の仕込槽の蓋が見える2階室 (◇)

 酒蔵見学の後は、お楽しみ香住鶴の試飲。旨い!もう1杯! 左党には、好きな銘柄を飲める有料試飲コーナーもある。
 さらに、香住鶴自慢の銘酒即売コーナーに加え、酒粕や酒米麹を使った多彩な商品(石鹸・味噌・漬物・燻製品・菓子・アイスなど)の販売コーナーも充実している。「地酒ようかん」と「香りまんじゅう」を土産に求めた。

 陶然たる心持になって帰途につく。

 今日は、松葉ガニを賞味し、新余部橋梁を渡り、集落から見上げて偉容を実感した。 さらには百薬の長として、
美味しい地酒香住鶴を頂いた。
 幸い、最後まで穏やかな好天に恵まれ、渋滞もなく、予定の7時ごろ無事高槻に帰った。
<写真>竹内一朗(◇印) 永野晴朗(無印)    <>永野晴朗