糸で描く絵「糸遊」を楽しむ 
 
大津市在住 脇本良夫
 
◆「糸遊」とは

  この言葉、初めてお耳にされると思いますが、糸に親しみ楽しむという意味で、私が個展を開いた
  際に、会場の責任者の方からこの手法に対していただいた名前です。
  自分で足を運んで撮影した写真を下絵にして、その上から色糸を貼り付けて一枚の絵を作り上げて
  行くという手法です。
  色糸は国内外のものを色々試しましたが、その中でフランス刺繍用糸が最も適していたのでこれを
  使っております。
 
◆始めたきっかけは

 
8年ほど前に義姉から貰った一枚の絵を目に
したのがきっかけでした。千葉県のキット 
販売会社の商品で、太めの色糸を貼り付けた
ものです。
それを一目見た時に「これは面白い。私にも
できる」と確信し、スタートしました。
右にあるのが初めての作品「椿」です。
試行錯誤の連続でしたが、これを作り上げた
事で是非とも続けて行きたいという思いを強
くしました。
その後もいろいろな題材で作り続け、おかげ
さまで、作品展への出品や個展開催の機会も
いただき、多くの方々にご覧いただく事が
できました。
     
初回作「椿」    
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
◆それでは簡単に作り方をご紹介致します

①下絵を準備する
  完成品をイメージしながら写真を撮影しサイズを拡大調整。その上に接着材(両面テープ)を隙間
  なく凹凸が出ないようにしながら貼り付けて行きます。

②色糸と手順を決める
  下絵に合わせて使用する色糸を選定し、貼り付ける順番を決めたらその部分を残してテープで保護
  して準備完了です。

③色糸の貼り付け
  いよいよ貼り付け本番の作業。テンションのかけ方に最大の注意を払いながら、ピンセットとヘラ
  を使い順番に隙間なく貼り付けて行きます。また色糸の切り口も後でほつれることが無いように
  尖り丸み等下絵の形に合わせて処理をしておきます。最後に細部まで見直して完成です。

   
  下絵 申と道具
 集中そして集中
 
  完成した作品です。右はその一部を拡大したもので、色糸を張り付けた様子がご覧いただけるで
  しょうか。
 
 
歌舞伎
     
◆それでは作品の一部をご紹介致します。
①祇園祭「鉾巡行」
  京都祇園祭に出かけ写真に収めたものを題材にしました。刺繍の模様、人物の顔や動きに大変気を
  配りながら作り上げた作品で完成まで約4か月を要しました。
   
②竹林の7賢人 
  母は生前、西陣のつづれ折りの職人をしておりました。福井県小浜市で毎年秋に開かれている
  放生祭(ほうぜまつり)の山車の後ろ面(見送り)に母が織り上げた飾り布が使われており、
  それを題材にして、母の作品に出来るだけ近づけたいと思いながら作成いたしました。

   
 
祇園祭 「鉾巡行」


竹林の7賢人

 
③孫(18歳時)の絵
  孫が18歳の時に描いた山の絵をモチーフにして作成したのがこの作品です。原画の構成は活かし
  ながら色付けは私なりに表現して見ました。
 
孫の絵 山

 
孫の絵をモチーフにして

  題材は、動物、植物、絵画、工芸品、風景等一切拘わらずに自由に選んでおります。
   

入選作品「かいつぶり」


 

 
 
●県シルバー作品展に毎年出展。お陰様で昨年まで7年連続して入選することが出来ました。
  今年も再挑戦する予定で、そのための作品もすでに準備出来ております。推奨作品に選ばれま
  すと全国大会に推薦されることになっており、今年こそはと密かに期待しているところです。
  機会がありましたら個展も開きたいと思っております。
   
●偶然の出会いから始まったこの世界に今ではすっかりはまり込んでいます。
  遅くになって始めたことではありますが、家族の理解と皆さんからのご支援をいただき、前向きに
  より良い作品作りを心から楽しみながら思い切り取り組んでいけることにこの上ない幸せをかみ
  しめております。今後もより多くの方々にご覧をいただき、そしてささやかながら感動をお届け
  して行ければいい、その思いを大切にして肩を張らず楽しみながら作品作りを続けて行きたいと
  考えております。

  ご高覧いただきまして大変ありがとうございました。