マレーシアの生活について

マレーシア在住  三原 實

マレーシアに転居してから約3年が経過しました。”石の上にも3年”という諺どおり、ようやく溶け込んだような気がしますので、我々の第2のホームタウンをご紹介申し上げたいと思います。
★マレーシアのプロフィール

1、地  理 ‥‥赤道のすぐ北側です‥‥
 @北緯1度弱から7度、東経100度から120度の間に位置し、タイ・シンガポールに両端が接するマレー半島南部諸州と、南シナ海を隔てたボルネオ島北西部の、サバとサラワク州(東マレーシア)からなっています。
 A国土の面積は約33万平方キロbで、日本の約87%に相当しますが、国土の50〜60%は熱帯雨林のジャングルです。

2、民族構成 ‥‥複合多民族国家です‥‥
 構成は人類学的に3つに大きく区分されます。
 @一つはオラン・アスリと呼ばれる先住少数民族で、背が低く色黒で頭髪が縮れた人種。
 A次に上記とは異なる原マレー人と、その昔、近隣の島々から渡来した俗に言う新マレー人で、何れもモンゴロイド系で褐色、頭髪は直毛と定義されています。
 B3番目は、19世紀の英国植民地統治下に、大量に移住してきた中国系およびインド系民族です。

その結果、現在の民族構成は先住少数民族系14%、マレー系45%、中国系32%およびインド系9%となっており、総人口は約2730万人です。

3、政  治 ‥‥立憲君主制国家です‥‥
 @国王は、憲法上国家元首であり、その下に立法・行政・司法の三権分立機構となっており、9つの洲の統治者であるスルタンの中から互選され、任期は5年の輪番制です。

 A国会は、国王ならびに上院、下院の2院で構成され、上院議員の2/3は国王の指名ですが、下院は選出による154名で構成され、下院に大きな権限が与えられています。

 B国内13洲の洲政府は、各州独自の憲法により土地、農業、地方行政など独自の権限を持って統治しています。

<キングスパレス(国王の館)正門>
 

<旧の最高裁判所全景>

4、経  済 ‥‥天然資源依存 → 工業国家 → 観光国家へ‥‥
 @1970年代は天然ゴム、錫、パームオイル、木材、石油などの一次産品の輸出が好調でしたが、第2次オイルショック以降の80年代前半は、世界不況の影響をもろに被り落ち込みました。

 A85年頃からパームオイルの価格急騰に加えて、エレクトロニクス関連の2次産業に取り組み国内景気は回復し、新興工業経済地域(NIES)の仲間入りを果たしました。

 B国民の暮らしは良くなりましたが、同時に人件費の上昇を招き近年の経済成長は鈍化気味で、新規の国策として観光立国を標榜し、今年の独立50年周年と合わせて“Visit Malaysia Year”(マレーシア訪問年)を打ち出し種々のキャンペーンを行っています。

<ペトロナスタワー 高さ 452m>

<リゾート地ランカウィーの海岸>

<マレーシアグランプリ>

5、社会・教育‥‥民族ごとの多様な文化が存在します‥‥
 @国家・地方を問わず公務員の構成はマレー系民族が主体で、中国系は商業や鉱工業など経済界に根強い勢力を持っています。インド系も商業やサービス業に従事していますが、医者や弁護士の数はインド系が圧倒的多数です。

 Aこの国の国教はイスラム教で、マレー人の多くはイスラム教徒ですが、信仰の自由は認められており、中国系の仏教、インド系のヒンズー教および植民地時代に持ち込まれたキリスト教の信者も多く、それぞれのモスク・寺院・教会等が多数あります。

 B小学校は6年制。授業はマレー語、中国語、タミール語とそれぞれの民族ごとに、また英語は各民族横断的に使用され教育費は無料です。高校制度は無く中学で下級・中級・上級の3段階計7年を就学し、その後の大学は4年制です。

 C国の公用語はマレー語で、公文書には英語の添え書きが付いたものと無いものがあります。更に独立後の一時期に英語を教えなかった期間があり、民間人のみならず公務員・大臣にも英語を解せぬ人がおり困ることがあります。

<伝統の衣装を身に着けたモスリムの女性>

<ホーリ祭で神輿を引く苦行に挑むインドの若者>

<東南アジア一のShoh Alamのモスク>

<中国寺院 「天后宮」>
 

<ヒンズー教寺の院>
6、気候・居住環境‥‥体に優しい環境です‥‥
 @気候帯分類では熱帯域ですが意外に暑くなく驚く訪問者が多いようです。
資料によれば、クアラルンプール(KL)の最高気温は年間を通して27〜29℃、最低は25〜26℃、湿度は65〜75%ですが日本のような不快感は全くありません。

 A東マレーシアはやや異なりますが、半島マレーシア西海岸域は、日々降るスコールによる一時的な小規模冠水以外、台風・竜巻・地震・花粉被害等のような自然による災害は皆無で、年中熱帯の花が美しい緑ゆたかな過ごしやすい気候です。

 B村落の住居形態は伝統的な高床式1戸建てが主流です。都市部で最も一般的なものは“リンクハウス”という長屋形式と、次に多いのが高層コンドミニアムです。資産家は ”バンガローハウス“と呼ぶ、庭園にプール付の1戸建てに住んでおり、何れも都市建造物の主体となる建材は、レンガ・セメント・鋼材の不燃構造です。

<庶民の住宅「リンクハウスとその俯瞰写真>

<金持ちの邸宅「バンガローハウス」>

7、医療・福祉‥‥日本に劣らぬ高度な医療レベルです‥‥
 @KL周辺には、国立病院・大学病院・民間経営合わせて現在7つの総合病院があり、欧州系医療技術の高いレベルを誇っています。また、街中には“クリニック”と呼ぶ各診療科ごとの医院が、殆ど24時間診療を行っています。
  (日本語対応病医院8箇所)

 Aマレーシアは一般に家が広く、メイドが安く雇える国であるため、家庭での介護が主体です。ナーシングホムという入居金不要で、毎月の経費4〜6万円程度の有料老人ホームも10箇所以上ありますが、一般庶民には高くて払える額でなく利用は停滞しています。
日本人会ではその一部機関と提携し、邦人専用の介護施設として取り組み中です。

<民間経営の総合病院>

<街中のクリニック>

<朝市の風景>

8、その他‥‥物価・食べ物・交通‥‥
 @豊かな資源に支えられた経済の上に政情が安定しており、輸入品を除けば殆どの物価は日本の半額程度です。ゴルフのプレー代を例に取りますと、会員になれば日本円で約3000円/月の会費を払うだけで、プレー代はじめプール・テニス・ジム等の付属施設利用も一切無料で、毎日のプレーも可能です。

<ローカルが利用する路上の朝食売り場>

<日系のスーパーマーケット>

<野菜市場>
 A食文化もバラェティーに富んだ国際的なグルメ国家です。多民族社会ですのでそれぞれのレストランがあり、各種食材もスーパーマーケットで安く簡単に入手できます。
因みに日本食レストランは300軒以上とのことで、日本人経営の店はメニューの風味・質ともに日本の街中のレストランに劣らないと思います。

 B日本と同じ左側通行です。交通手段は車が主体で各家庭に3〜5台所有しています。殆どの道路は3車線で、高速道路の法定速度は110kmです。市街地の渋滞対策としてモノレール建設が随所で進められており、私共の街も3年後には開通する予定です。

<街中の一般道路>

<KLへの幹線道路>

<市街地を高架で結ぶモノレール>

<木陰で客待ちのカラフルなタクシーとモスリムの運転手>
 

<張り紙をした個人車の路上売り出し。(結構な掘り出し物があります)>

★私とマレーシアとの係わり


1、端  緒‥‥予期せぬ人物とめぐり合わせ‥‥
 @私の現在のパートナーは、在職中の海外工場展開の業務を通して、出会ったうちの1人で、化学薬品の製造・販売と水質改善事業全般を営む中国系マレーシア人の実業家で、タイ、フィリッピン、中国にも現地会社を有し東南アジアの各国で活躍しています。
 その昔、宗教について議論したのが意気投合の糸口となり、付き合いが始まりました。
 A退職と共に彼の事業に参加する予定でいましたが、諸般の家庭事情で踏み切れず、旅費稼ぎの小さな事業を続けながら、数回/年の定期渡航で支援を続けていました。

2 私共の暮らし‥‥案ずるより生むがやすし‥‥
 @私共は、1993年に購入したコンドミニアムに住いしています。首都KLの隣町で、一例ですが、KL中心街までは車で約15分、KL国際空港や国際F1レーシング場までは同35分、シンガポール・タイまではそれぞれ5時間程度と非常に便利な場所です。
 A転居するまでは借家にしており、当初の貸し手市場も幸いし購入額の約6割は回収しました。日本のマンションとは異なり、各部屋とも採光できる構造で、プール、テニスコート、ジム・卓球場、レストラン、ミニマーケット、ライブラリーなどを備えています。
<私共の住むコンドミニアムとその正門>
<コンドミニアムの間取り 面積は約160u>

 B在宅時の日常は、日の出前の隣接する公園からスタートです。柔軟体操・鉄棒のあと5箇所あるコースを選び、1時間強のウォーキングとシャワーを終えて朝食です。夕刻には雨天時以外、汗ながしを兼ねたプールでの水泳で、一層ビール味が引き立ちます。
 C前述の様にゴルフ環境には恵まれていますが、私は訳あってゴルフを止めましたので、現在はマリンスポーツを楽しんでいます。また、クラシック音楽が好きで暇を見つけては演奏会に出かけたり、CDを流しながらの読書が気分転換のひと時となります。
料金は少し割高ですが、日本の新聞も当日版で読め、テレビの視聴も可能です。


<コンドミニアム内のプールサイドにて>

<パラセーリング。(ペナン島の砂浜にて)>

<スクーバダイビング。(ティオマン島にて)>

 D我々は、”Malaysia My Second Home Program”というマレーシア政府の、外国人退職者優遇制度を利用し長期滞在ビザを取得していまが、この制度は対象者の国内での就労を禁止しています。しかし、私はKLの日本商工会議所に、エンジニアのボランティア登録をしており、自社の業務と連携を取りながら、必要に応じて各国に出かけ、進出日系企業のお手伝いに努めています。
2000年に取得した10年有効のパスポートが5年強で満杯となり、昨年ビザページ増補の手続きを済ませたところです。

<ドイツ出張に同行した家内とパートナー。(ミューヘンのビアホールにて)>
 E家内は英語が不得意で当初は心配しましたが、今では前記のような頻度で家を留守にしても、気楽に一人で買い物、テレビ・ビデオ、その他趣味を楽しんでいます。
 昨年、インドへ行く私を空港まで送った復路が、工事のため閉鎖されており、未知の迂回路に困った彼女は通行中の車を止め、片言の英語とジェスチャーで教えを乞い、帰宅した経験もあり、最近はそれなりの自信が芽生えたようです。

  Fマレーシア人は気さくで親切な人が多いと感じています。また、治安面も比較的良好ですが、ただ、諸外国からの出稼ぎ労働者は要注意です。
 昨年、日本の週刊誌がロングステーの虚実を特集していましたが、世の中の物事には必ず表裏があり、間違いを防止するには、何事も自らの確認と納得が大切と考えます。

 Gマレーシア政府は、前記制度を利用する滞在者の目標を2万人としていますが、2006年中の国別許可件数は中国1974、バングラディシュ1429、イギリス885、台湾522、シンガポール486および日本434で、現在の資格所持者は合計8723人で目標未達のため、日本の団塊の世代の退職者に期待を示すと共に、種々な優遇措置を打ち出しています。

 H私共は現在の生活に満足しており、日本の家族も賛同してくれています。
  よく他人から永住の意思について質問を受けますが、正直なところ現在の想いは互角です。

  今日に至る私の人生の中で「継続は力なり」という諺を実感しています。
  今後の余命がそれを方向付けてくれるものと信じています。