『湖族の郷』の歴史・文学巡り
〜はじめに〜
 小生、滋賀に住まいを移し間もなく9年になろうとしています。
 今回、足元の居住地再発見をテーマに、JR西日本の「滋賀を歩こう!」から地元である湖族の郷 歴史・文学巡りのモデルコースをベースに少々のオリジナリティを出しながら湖族の郷「堅田」を歩き、出来るだけ自分の言葉で紹介したいと思います。
JR湖西線堅田駅に降りると駅前ロータリーの東側に二人の少年像が建つ「湖族の郷」の碑が迎えてくれる。そのまま東方向へ直進すると琵琶湖の水が入り込んだ「堅田内湖」が横たわっている。ここでは淡水真珠が養殖されており、一昔前なら鮒などがよく釣れたであろうと思いを馳せながら北へ向かう。
 途中には水郷のような水路や小さなため池などが点在し、のどかな風景は琵琶湖の影響を感じずにはいられない。
 

JR堅田駅

堅田駅前の湖族の郷碑

堅田内湖

いたるところに水路が
   

あえて狭い田舎道を15分程度歩くと野神神社に到着。南北朝時代の武将・新田 義貞の妻「勾当内侍」を奉る神社。人々は内侍を哀れに思って塚を築き、内侍の霊を慰めるための例祭を行っています。
 そこから湖岸の道を少し戻ると親鸞の直系である蓮如と縁の深い泉福寺がある。


野神神社

勾当内侍御廊道

泉福寺

泉福寺境内
   
泉福寺の前の道をびわ湖側に入ると、まるで映画のロケーションのような景色が目に飛び込んで来る。出島(でけしま)の灯台である。
 高さ7.8mの木造の灯台として、昔から船の座礁や難破事故が絶えない難所であったことより、船の安全を願い、明治8年にこの灯台が建てられました。
   

急に視界が広がる

時代劇に出てきそうな風景

琵琶湖を見続けて...

威風堂 そびえ立つ出島の灯台
   

出島の灯台を後にして湖岸沿いを南に進むと堅田漁港に出る。船溜まりの手前には多くのロープ類や漁網などが積まれていた。
 暫く歩くと港橋のたもとに琵琶湖で遭難した旧制第四高校(現、金沢大学)の学生の霊を慰めるために歌われた歌詞が刻まれた「琵琶湖哀歌の碑」がある。奥野 椰子夫作詞の一節を紹介すると誰もが耳にしたフレーズである。

              ♪遠くかすむは  彦根城
               波に暮れゆく  竹生島
               三井の晩鐘   音絶えて
               なにすすりなく 浜千鳥

また、すぐ側には通り過ぎてしまいそうな三島 由紀夫文学碑が建っている。
 近江絹糸の労働争議を題材に描かれた長編小説「絹と明察」に描かれた堅田の情景のくだりが記されています。

更に、浮御堂の瓦屋根を見ながら向かう散策路に「堅田十六夜の弁碑」があり、芭蕉の俳文が全文記されています。
 浮御堂の手前には「城山三郎文学碑」があり、水上機特攻に振り向けられる少年たち予科練生をテーマに描かれた小説「一歩の距離」のくだりが記されています。


表示塔

堅田漁港

琵琶湖哀歌の碑

三島 由紀夫文学碑


堅田十六夜の弁碑

城山三郎文学碑
 

堅田陣屋跡を右に見て、浜通りに戻ると法難を受けた蓮如上人を助けるため、自らの首を差し出した殉教者「堅田 源兵衛親子」の像が境内にある光徳寺へ行く。
 隣り合わせにある祥瑞寺は室町時代に京都大徳寺の僧が開いた寺院。頓知で有名な一休が青年時代厳しい修業を積んだ寺としてもその名が知られています。

   

光徳寺

堅田源兵衛親子の像

祥瑞寺

祥瑞寺境内の石碑
   

文学・歴史巡りは佳境に入り、近江八景「堅田の落雁」で名高い“浮御堂”を訪ねる。平安時代恵心僧都が湖上安全と衆生済度を祈願して建立しました。
 境内には多くの石碑があり、どれが芭蕉のものかわかりませんでした。

      “鎖(じょう)あけて 月さし入れよ 浮御堂”   芭蕉

浮御堂入り口と魚富商店の間の狭い路地を行くと湖岸公園に出る。ボートと釣り人が霞み、墨絵のような光景を醸し出している。また、ここは水鳥ウォッチングの好適なスポットでもある。
 この浜は「堅田おとせ浜」と言い、おとせ桜とその碑には淡海節の歌詞が刻まれている。

   

魚清楼と浮御堂の間から

湖上に浮かぶ浮御堂

浮御堂山門(楼門)
     

老舗 魚富商店

湖岸公園

遠くにかすむ釣り人

おとせ桜と淡海節の碑
 
最後に入った「湖族の郷資料館」は中世から江戸時代にかけて水運や漁業などの特権を持ち、琵琶湖最大の自由都市を築いた堅田衆(湖族)の歴史と、同地に縁のある人物資料が展示されていた。
   

湖族の郷資料館

湖族の生活機材が...

芭蕉の足跡

堅田を取り上げた文学者たち

「琵琶湖哀歌」の作詞者奥野椰子夫のコーナー

屏風絵
   
〜おわりに〜

総体的に言える歴史と文学の街「滋賀県」、まず身近なところから再発見して下さい。思わぬ宝物が発見されるかもしれません。これからの生活は地元を知ることから始まります。
 歴史や文学に浸りながら豊かな感性を磨きましょう。人生まだまだこれからです。

                      

                    2011年6月

                          (資料提供) *JR西日本“滋賀を歩こう”案内チラシ
   
                                  *堅田 湖族の郷資料館


                          (実 践 者) 大津市在住  渡辺 秀雄