ぶらり栗東『旧和中散本舗・日向山・日向山古墳』

 
≪旧和中散本舗≫
・和中散本舗の所在する六地蔵は、古くは梅の木村と言い、旧東海道の草津宿と石部宿の中間にあって古来より間の宿として栄えてきた。
・今から約360年前、元和の頃にはここに大きな梅樹があって、その木陰で旅人に薬を売っていたのが和中散といい、江戸時代には同業者が5軒に殖えてその本舗を是斎(ぜさい)と称し、昭和29年に国の重要文化財に指定されている。

 


 
 屋根に掲げられていた看板(わちゅうさん)と屋号(ぜさい) ぜさいは軒先にも吊下げられていた。
 

・是斎は大角家を名乗り、元和年間京都の名医、半井卜養(はからい ぼくよう)の娘を娶った時に和中散・奇妙丸(小児薬)などの製法が引き出物として贈られ、それから売薬を始めた。
・慶長16年、徳川家康が近江永原に来た時腹痛になり、典医がすすめた和中散を服用したらたちまち快癒したのでその名が広く知られるようになった。
・現在の建物は慶長年間(1596〜)に建てられたものだと言われているが正しくは寛永年間(1624〜)と思われる。
・店舗と製薬場及び台所、居間を合わせて間口67尺、奥行62尺、高堀造りで両端に防火用の卵建壁(うだちかべ)を建て、上方は本瓦葺、下方は浅瓦葺で柱が一本おきに外されるようになっていてあげ戸を上下して茶釜で湯を沸かし、旅人に振舞っていた。

                   (旧和中散外観)
 
・製薬場には直径4メートルに及ぶ樫の木で作られた大車・万力車・石臼の3部からなり、入力による歯車の回転で石臼を回転させ、薬草をより細かく粉末にする仕掛けになっていて木製動輪が残っているのは大角家だけである。
  

薬草を手前の治具で細かく切り、奥の治具ですりつぶす

製薬機


製薬機と石臼

・和中散本舗はその隣に座敷を増築して≪梅の木小休み本陣≫と称し、天皇・公卿・大名たちが少憩されるならわしとなっていた。建物は切妻造りの四脚門があり、袖堀13尺がそれに付せられている。
・門を入ると式台があり、切妻造りでひさし付、玄関は千鳥は破風となっていて欄間の彫刻が素晴らしい。
 

梅の木小休み本陣外観


明治天皇ご来臨記念碑


本陣玄関
 

・玄関広間10畳、次の間6畳・8畳、上段の間は10畳で書院窓・床の間・棚があり王座として使用され、今も床の間に秘蔵されている草履は明治天皇が召して前庭の築山に登られたもの。
・草履が少し大きかったので当主にお聞きしますと、汚れが足に付かないように配慮されたとのことです。

・明治天皇は江戸〜京都行道中4回立ち寄って休憩された。他に昭憲皇太后・英昭皇太后・シーボルト、いずれも本陣で休憩されている。また、玄関や座敷には長沢芦鳳・在師・狩野隆敬・狩野永納等が描いた襖絵・屏風、奇人蜀山人(しょくさんじん)の狂歌など貴重な作品を見ることができる。

 

上段の間

明治天皇が庭園散策
時に召された草履

上段の間の襖絵
狩野隆敬の作
 

狩野永納の屏風絵
 
   
・庭園は江戸時代に作られたもので背後の(にっこうざん)を借景とし、正面に芝生張りの大小の築山を配し、奇石・奇樹を配した落ち着いた庭園で平成13年1月に国指定名勝(大角家庭園)となった。
  国指定名勝・大角家庭園

 


 

◇内部の見学はすべて予約制で電話予約が必要、一人でも応じていただけ第24代当主大角弥右衛門氏が丁寧に説明を
して下さる。
【所在地】:栗東市六地蔵402番地     【電話】:077-552-0971  【拝観料】:400円
【交 通】:JR草津線手原駅から徒歩約20分  Pあり

 
≪日向山(多喜山)≫

・日向山は六地蔵・伊勢先に位置し、三上山(近江富士)を小さくした形の美しい山で標高222mの山頂からは、西に栗東北部の平野を、北東に野洲川下流の平野を見渡すことができる。
・戦国時代には眺望がきいて東海道を眼下に見下ろせる重要な地点である当地に城が築かれたとされています。
・そしてこの山の別名から『多喜山城』と呼ばれ、かって地元の真宗勢力と織田信長が対抗したとき、信長の砦として築かれた。いつの頃か城は廃され主郭の跡には≪竜王神の祠≫がまつられ信仰の山として人々に親しまれるようになった。
・頂上までは721段のゆるい階段で登りやすい。

 


六地蔵からの日向山

頂上からの眺め(東側)
 

頂上からの眺め(北側)

古墳マップ
 

石段

階段からの眺め(西側)

竜王神の祠
   
 
≪日向山古墳≫

・古墳は直径18メートル、高さ4,3メートルの墳丘を持つ円墳である。主体部は片袖式の横穴式石室である。
・この古墳は盗掘などによって荒らされ、出土遺物も一切ないが古墳の立地、石室の規模、形態などから六世紀代の古墳と推定され、以前は中の石室の見学もできたが現在は石などの落下があり、入れないように施錠され、草が茂って手入れがなされていない。外からの見学のみ。

 

草が茂る古墳

石室の入口
       
 

【交通】

日 向 山:JR草津線手原駅からバスも出ているが本数も少ない(和中散本舗から徒歩3分程度)徒歩約20分
日向山古墳:日向山バス停前(登山口の近く)

【資料】

和中散本舗:カタログと見学
日向山、日向山古墳:栗東市観光課、見学              皆見恵美子 2008年6月