『 太 神 山 不 動 寺 』
太神山不動寺とは

大津市の南部に広がる湖南アルプスの主峰、標高599.7mの太神(たなかみ)山頂にある天台寺門宗のお寺です。


 不動寺入り口鳥居

巨岩の上に立つ本堂

奥の院近くの三角点
寺伝によると、平安時代の貞観元年(859年)に三井寺(園城寺)を造るために山に登ってこられた智証大師円珍が、峰に紫雲がたなびき、夜ごと金色の光を表し、三井寺を照らしているのを田上山頂まで登って霊木で彫った不動明王の像を岩窟に安置して寺を建立したのが、太神不動寺の始まりと云われています。
 
不動寺本堂(本尊 不動明王)
 大きな岩に寄りかかるように建つ本堂は、南北時代の建築とされています。桁行三間、梁間三間、一重寄棟造り檜皮葺の建物です。背面中央の柱間は開放されて、須弥壇と厨子が納まっています。

 特に表裏が全部意匠を変えた花肘木、外迴り化粧隅木の下の持送り等の細部、厨子や須弥壇は優れたものです。

 巨岩に寄りかかる舞台造りに特色をもち、和様仏堂建築の典型的な形をとるものとして、貴重なものと言われています。ちなみに現在の本堂は鎌倉時代初期建久四年の造営で、源頼朝の建立と伝えられています。
大正13年(1924年)4月に国の重要文化財に指定されました。


本堂建築模様の一部

本堂の巨大な脚組み
堂内岩窟には円珍坐像と不動本尊が安置されています。
一方、境内からの眺望も素晴らしく京都や琵琶湖、信楽の町を眺めることが出来ます。
不動尊信仰とは
古代の巨岩など自然信仰の一つ盤境(いわさか)信仰に始まり、平安時代に入って不動尊信仰に結びついて栄えたと云われています。

くぐり抜けも出来る巨岩

奥の院
 太神山不動寺の大護摩供
今でも9月の大会式には護摩焚きが行われ、地元の方は勿論、遠方からの参拝者も多く見られます。
今年の大会式でも30余名の山伏がホラ貝の音を先頭に本堂での祈祷後、消防団員防火放水体制のもと大護摩供がスタート。煙と炎の幻想的な雰囲気の中で「天下泰平・五穀豊穣・家内安全・請願成就」の厳粛なる祈祷が行われました。
もうもうと秋空に白煙を噴き上げる護摩供
また、山伏対山伏の問答のやりとりは実に妙であり必見です。

問答の様子

進行する山伏
五色の護摩焚き
 護摩を囲む前列中央には、黄色の不動明王、
 東方には、緑色の降三世夜叉明王、
 西方には、白色の大威徳夜叉明王、
 南方には、赤色の軍荼利夜叉明王、
 北方には、青色の金剛夜叉明王の御札を掲げてあります。

山伏が四方に放つ弓矢を拾うことが出来ると幸福になれるとされており、また四方を囲む縄に吊り下げられた御幣を頂くと身守り、家守りになると言われており、参詣者は必死で獲得されています。

ちなみに次の写真はリポーターが獲得できた赤の弓矢です。


新不動明王

幸福の弓矢

黄色の矢を放つ山伏
鐘 楼
鐘楼に吊られている現在の梵鐘は、平成6年に新鍛造されたものだそうです。
以前の梵鐘は戦争時鉄砲の弾として使われ、その後は石が吊らされていたとのことです。
この鐘楼を下っていくと、修行のための行場もあります。

柔らかな音色の梵鐘
太神山不動寺の年中行事
大祭は1月28日の初不動・2月節分・そして9月22日から9月28日迄の本尊御開扉大会式の年3回です。
9月24日、26日、28日の3日間大護摩供が行われています。

年中行事板

不動明王略縁起図
建立者 智証大師円珍の生涯
 ・弘仁五年(814年)讃岐国(香川県善通寺市)に生まれる。母は弘法大師空海の姪にあたる。
 ・14歳の時上洛。
 ・15歳で比叡山延暦寺に登り、義真に師事。
 ・24歳の冬、座禅中の円珍の前に金色に輝く不動明王が忽然と現れる。
  これこそ大師一生の信仰を決定付けた黄不動尊。
  この尊像が日本三大不動の一つとして有名な三井寺の秘仏(国宝)金色不動明王。
  日本三大不動とは
 1つは、 三井寺の金色不動明王。
 2つ目は、弘法大師が開いた滝谷不動尊(俗に眼の神様)
            近鉄長野線 滝谷不動駅下車
 3つ目は、中野不動尊(今でも不滅の灯明が燃え続けている)
            JR福島駅 堰場下車
 ・39歳の時、6年間にわたる入唐求法の旅に。
 ・貞観十年(868年)に第五代天台座主に。
 ・寛平三年(891年)78歳で入滅。
 ・延長五年(927年)醍醐天皇より智証大師の諡号(しごう)が贈られる。
 
アクセスなど
  所在地:大津市田上森町885
  車  南郷洗堰〜田上里町〜迎不動・鎧ダム出合(駐車)〜 (徒歩40分)〜泣不動〜(徒歩40分)〜太神山不動寺

  バス JR石山駅〜(30分)〜帝産湖南バス:アルプス登山口下車〜(徒歩120分)〜太神山不動寺
  太神山不動寺への登山には地元8ヶ村より、それぞれの参道があるそうです。
  今回のリポートは大鳥居よりの参道―太神山不動寺で参詣しました。

登山道

六地蔵

不動寺境内
終わりに
取材に当たっては田上在住の中野瑞夫ご夫妻(会員の方ではありません)のご案内で、地元の方ならではの誠に有難い参詣させて頂き皆さんに紹介することができました。
私たちの住む歴史の国滋賀、少し足を伸ばせば数多くの旧跡や城跡、 石仏、景観、生活文化等々に触れることが出来ます。
今一度自分の町、市、県をゆっくりと振返って見るのも、味わいある時間の流れになるのではないでしょうか。
取材 有本 功 2007年9月
参考資料 琵琶湖夢事典