松江市美保関町下宇部尾に「横田神社」という社がある。毎年10月16日には「はんぼかべり」という神事が行われる。
「はんぼ」とは飯櫃のことで、大国主命(おおくにぬしのみこと)が美保関の事代主命(ことしろぬしのみこと)に会いに行く途中道に迷い、腹ペコになった時、漁師の家に泊めてもらい、赤貝飯を振舞われた。大国主命は嬉しくてはんぼ(おひつ・飯櫃)をかぶって踊ったという話から始まった神事。
神職が稲の種まきから収穫までの形を行い、炊きあがったご飯を「盛ろや盛ろや嫁の飯盛ろや」と、皿としゃもじでかき混ぜる。そして、その飯櫃を留袖姿の嫁女役の女性に担がせようと追いかけ、女性は逃げ回る。豊作を祈願する神事。
次に杵と薦(こも)で餅つきの動作を行い、薦に杵を巻き、別の留袖姿の女性に背負わせようと追いかけ回る。男女の交わり、子孫繁栄の祈願である。
そして本物の鯛を竿に付け、参拝客の前に垂らす。人々はそれを両手で挟み、大漁を祈願する。次に、魚の形をした紙を参拝客の前に垂らし、皆それを争って取って持ち帰り、お札のように扱う。
美保関町森山にも「横田神社」があり、森山の方が本家で、下宇部尾は分家のようだ。
「はんぼかべり」は両社で行われていた。しかしながら、地元の人手不足もあり、平成30年には下宇部尾の方だけでこの神事が行われた。
今回の嫁女役も、嫁いだ娘さんにお願いしたとのこと。人口減少の折、文化がだんだん薄くなっていく。地域で守るべきものは有形無形なものが数多くある。
(情報 和田森洋)
|