スイス・アルプス4000m峰10登目
ナーデルホルン(4,327m)登頂記      宝塚市 黒田敏彦

 
  

2002年7月 60歳代にスイスアルプス4,000m峰10座は、是非登頂したいという思いを
この夏ついに叶えることができました。
7月15日
関西空港を発って、翌日午後スイス・サースフェーに到着
ここは標高1,800m、ツエルマットとは間にミシャベル山群を挟んだサースタールの奥にある避暑地である。
7月18日
先ず最初の4,000m峰アルプフーベル(4,206m)に登る。
岩稜帯は30分程度で、大半は雪稜の登擧である。登り5時間、下り3時間を要した。しかしこの山は下りが難関で、頂上から一直線に氷河地帯を休みなく、くさり始めた雪にしばしば足をとられ、よろけながら1,300mの標高差を一気にかけおりるという強行軍だった。
左から アルプフーベル(4,206m)
テッシュホルン(4,490m)
ドム(4,545m)

7月20日
次はアラリンホルン(4,027m)の登頂である。
正面から見ると、全山白雪に覆われたおにぎりのような形をしており、もっとも容易な山の一つである。ただこの山は西の方から眺めると北面とは全く違った優美な尖峰である。登り2時間、下り1時間30分の半日登山であった。

アラリンホルン(4,027m)西面

7月23日
最後のナーデルホルン(4,327m)に挑戦である。
スイスは至る所に登山電車やキャビン、ロープウエイ等が設けられているので、一般的にアプローチが容易だが、ナーデルホルンはそうはいかない。前日に標高3,300mの岩の上に立てられているミシャベル小屋まで数時間かけて自分の足で登っておかねばならない。
しかも標高差1,000mの急坂で、且つ上半分は岩場の連続なので結構体力の要るアプローチである。この小屋は改装され日が浅く、設備もよく整っていて非常に止まり心地のよい山小屋だった。
夕刻、ガイドのロルフ氏と会い、翌日の打ち合わせをする。儀基サースフェー在住の36歳、新婚早々とのことである。
宿泊客は50人くらいか。夕食後、世界各国からのクライマー達と雑談するが、つい先日行われたワールドカップが共通の話題となる。

ナーデルホルン(4,327m) 右
レンツシュピッツエ(4,294m)左

7月24日
日の快晴を予告してくれる満天の星空を仰ぎながら午前3時30分小屋を出発。
ガイドとザイルを結び、ヘッドライトの灯りをたよりに30分ほど岩場を登る。やがてホーバルム氷河にかかるところからアイゼンを装着。比較的フラットな雪原から次第に傾斜が増すが、雪がよくしまっているので、サクサクと踏みしめる音が心持よい。2時間程でウルリッヒスホルンから連なる稜線上のコル、ヴイントヨッホに着く。西面の視界が開けると同時に強烈な風が吹き付ける。なるほど風のコルと名づけられた訳である。
この頃から次第に空が明るくなる。そしてここから天空を指すようなナーデルホルンの頂を目指してダイレクトの稜線歩きとなる。稜線が次第に細くなり、バランスを失うと遥か下の氷河まで滑落である。緊張が連続するがこれがスイスアルプス登山の醍醐味でもある。

ナーデルホルン(4,327m)
頂上に向かう稜線
頂上に近づくにつれて岩と氷、雪のミックス帯となり、危険な箇所ではガイドが岩角にザイルをかけて安全を確保してくれる。
やがて前方から人声がする。頂上真近である。堆積した岩の上に大きな十字架が立っているが、一人立つだけの余地しかないので、順番待ちで少し岩陰に腰を下ろし、ドリンク休憩となる。
午前7時30分ナーデルホルン頂上着ザイルを十字架に巻きつけてセルフビレイをしての記念撮影をする。後ろを振り向くと長大な氷河を頂上近くまで突き上げている巨大な山が目に入る。ドム(4,545m)である。あの鋭角的な岩峰のイメージとは全く異なる北面の姿であった。

次のパーティが来ているので、早々に頂上をあけ、下山開始である。あまり登頂の感激に浸っている余裕がない。下りはこちらが先頭で一歩一歩ステップを確保しながら、細い稜線を慎重に辿ってゆく。稜線の雪面がやや広くなったところでやっと周囲の山を眺める余裕がでてくる。
左西方に屹立するヴァイスホルンのピラミダルな山容は圧倒的な迫力である。もう少し若ければ挑戦してみたい山だが小生の体力ではもはや無理だろう。
今登ってきた頂上からレンツシュピッツエに続く鋸の歯のような稜線は見事だ。
稜線伝いにレンツシュピッツエ経由で下降したい思いに駆られるが相当の時間と体力が必要だろう。
陽が昇るにつれて緩み始めた雪に足を取られ、時々アイゼンの裏にだんご状になった雪を払いながらトレースを辿る。
今回も無事に4,000m峰を完登し得た満足感と充足感にひたりながら小屋への道を急いだ。小屋到着は10時、往復6時間30分の登挙だった。

ナーデルホルン頂上&
頂上直下にて
ドムの頂稜に雪煙が舞う
ヨーロッパ・アルプス4,000m峰登挙歴
1997年 モンブラン    (4,807m) フランス
1998年 マッターホルン
ブライトホルン 
ポリュックス   
(4,407m) スイス
(4,164m) スイス
(4,092m) スイス
1999年 モンテローザ  
チナールロートホルン
(4,634m) スイス
(4,221m) スイス
2000年 メンヒ      
ウングラウ    
(4,099m) スイス
(4,158m) スイス
2002年 アラリンホルン 
アルプフーベル 
ナーデルホルン 
(4,027m) スイス
(4,206m) スイス
(4,327m) スイス
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