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第9話『蓮如さんと竜女』
・・枚方に伝承される「大蛇を救う説法」のお話・・
2017年4月1日
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<写真はクリックすると、大きく表示されます>
私たちの町枚方には、語り継がれた多くの昔話があります。枚方市ではそのような昔話を「枚方市伝承文化保存懇話会」のもとで、次世代に伝承し易くまとめられました。そこで枚方発見の新企画として、伝えられている民話を一話づつ紹介するとともに、史跡などを訪ねながら紹介していきたいと思います。
尚、掲載内容は、市発行の刊行物など(文末に参考資料を記載)を参考にして作成致しました。今回は第9回目として「蓮如さんと竜女」の話を紹介します。
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【 はじめに 】
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「光善寺」境内の蓮如上人像
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「光善寺」駅の標識(京阪本線)
京阪本線「光善寺」駅の改札口を西側に出て、駅前ビル群の中を通り抜けると国道1号線に出ます。この1号線を横断し、北へ少し直進し左折して阪急「オアシス」の前を通って少し進むとお寺が見えてきます。これが今回の民話の舞台となる「出口御坊淵埋山(でぐちごぼうえんまいざん)光善寺」で、枚方市指定史跡になっています。
出口は、文明七年(1475年)本願寺第八世蓮如上人(れんにょしょうにん)が建立した御坊を中心に発達した寺内町で、蓮如上人は越前・小浜(福井県)から蹉跎・出口の里に来て、御坊(のちの光善寺)を拠点に摂津・河内・和泉で3年間布教活動を行いました。『御文(おふみ)』というやさしく書いた仏の教えを渡し、「『南無阿弥陀仏』を何度も唱え手を合わせると、生きながら幸せになれます」と、誰とでも親切に話し合いをして諭しました。不安や悩みを持つ人はこの教えで心が落ち着き、信者がだんだん増え「浄土真宗中興の祖(衰えた仏教を元通りにした人)」といわれるほどになりました。この布教活動の中で「竜女昇天」の伝説が残っています。
【 蓮如さんの説法と竜女昇天の伝説 】
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「光善寺」を示す石碑
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「光善寺」の山門
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「光善寺」の 本堂
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「光善寺」の説明板(境内)
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河内名所図会の「光善寺」
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蓮如上人「腰掛石」の案内碑
ある夜、蓮如上人が箕屋の玄関先で丸い腰掛石に座り、村人たちと仏の話をして終わろうとしたとき、後ろの方でいつも熱心に話を聞いていた美女が進み出て、「和尚さま。わたしは梓原の深い淵に住んでいる大蛇の化身です。毎晩ありがたい説法を聞き、今まで弱い者いじめをし、欲しい物は先にとり、こわいものはなく、ずいぶんいけないことをしてきた数々に気付き、反省することができました。こんな罪深い悪者のわたしにまで和尚さまは、生きながら仏になる道を教えてくださり、ようやく仏になる願いがかないました。お礼にわたしの過ごした淵を差し上げますから、埋め立てて、御堂を立ててください」と申し出ました。蓮如上人は「よく分かった。そなたの願いは、きっとかなえるように心がけよう」といわれ、美女は安心して帰っていきました。
それから幾日か過ぎた日のこと、あの美女の大蛇は竜の姿になり、淵のそばにある大きな「サイカチの木」を伝ってゆうゆうと昇天していったということです。
そして130年後、出口の里に立派な寺が建てられました。淵を埋め立てて建てられたということから、「淵埋山光善寺」と名づけられました。「光善寺」の景観は、「河内名所図会」(享和元年刊)に掲載されており、山門、広大な寺域と本堂、竜女池、庭園、鐘楼、太鼓楼などが確認できます。
現在、「光善寺」の山門の横には、蓮如上人が説法をしたという「腰掛石」の場所を示す案内碑が設置されています。
【 関連場所探訪 】
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蓮如上人の御田地を示す石碑
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蓮如上人の「腰掛石」
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蓮如上人「腰掛石」の説明碑
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サイカチの木と説明板 (境内奥)
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竜女昇天伝説の「サイカチの木」
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「サイカチの木」の説明
《 蓮如上人の「腰掛石」 》
光善寺から南に100mほど行ったところの路地の角に「親鸞聖人 蓮如上人 御田地」という表示の石碑が立っています。御田地とは説教をした場所ということのようです。さらに近づいて見ると「蓮如上人御遺跡」と表示されている石碑があり、その側面には説教された場所の「箕屋」という記載も確認できます。この石碑のわきに丸い形状の蓮如上人の「腰掛石」があります。比較的小さい石であるという印象を受けました。またその横には「腰掛石」を説明する平板の石碑が立てられています。
《 竜女昇天伝説の「サイカチの木」 》
美女の大蛇が竜の姿になり昇天したという「サイカチの木」は「光善寺」の境内の奥にあり、寺の敷地からは直接確認できません。寺の方に見学と撮影について一言告げ、丁寧に案内してもらいました。木の周りは木を保護するかのように多数の石柱で囲まれており、木は太く竜女がこの木を上って昇天していく姿を思い浮かべることができました。木の傍らには説明板が設置されており、「サイカチの木」の植物学的説明に加えて竜女伝説について記載されていました。この木は1975年に大阪府指定文化財(天然記念物)になったということです。
《 光善寺境内奥の「池」など 》
「光善寺」境内の奥には、「サイカチの木」の傍に「池」があり、これがあの美女の大蛇が住んでいた淵ではないかと思いを馳せました。また「庭園」があり、「光善寺」境内の説明板には、江戸時代の伽藍の一部としての「庭園」が記載されています。
《 光善寺境内の「建築物」 》
「光善寺」境内の説明板には、寺内町の核としての風格を今に伝える江戸時代の伽藍の一部として「鐘楼」、「太鼓楼」が記載されていますが、実際、境内には現存する「鐘楼」、「太鼓楼」の姿を確認することができました。「鐘楼」はあちこちでよく見かけますが、「太鼓楼」は貴重な建築物のように思いました。
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境内奥にある池 |
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境内奥にある庭園 |
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境内の鐘楼 |
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境内の太鼓楼 |
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【 感 想 】
- 枚方・出口に古くから伝わる「竜女伝説」のゆかりの地「光善寺」とその周辺を実際に訪問することによって、この伝説への理解を深め、郷土に根付いていることを実感することができました。
- 「浄土真宗中興の祖」といわれる蓮如上人の教えは、悪事をはたらいていた竜女さえも諭し、仏にさせるという説得力と、竜女がその恩返しに「光善寺」の地を提供するという姿に感動しました。
- 「サイカチの木」や「池」、「庭園」などは、「光善寺」の敷地の奥にあり、自由に見学することができませんが、是非整備していただき、自由に見学できるようにすれば、さらに本伝説の知名度が高まるのではないかと感じました。
枚方発見チーム 中村、永井、松島、坂本、福本 HP作成:福本
参考資料
・ひらかた昔ばなし(総集編) 企画編集:枚方市伝承文化保存懇話会冊子編集刊行委員会 発行:枚方市 2004年3月
・枚方市指定史跡 光善寺(出口御坊跡) 光善寺境内設置の説明板:枚方市教育委員会 2010年4月
・光善寺のサイカチ 光善寺境内奥設置の説明板:枚方市教育委員会 2016年3月
・国立国会図書館デジタルコレクション 河内名所図会第6巻 インタ-ネット公開
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