牧野キャンパスの正門 |
各地に被害を残した台風一過の10月9日、関西医科大学牧野キャンパスを取材させていただきました。
関西医科大学の概要
★ 関西医科大学は西日本初の女子医専として1928年に創立された大阪女子高等医学専門学校が母体となり、1947年に大阪女子医科大学となりました。1954年に男女共学の関西医科大学となり、平成21年6月に創立80周年を迎えた歴史と伝統ある私立医科大学です。当医科大のキャンパスは、守口市文園町に大学本部、専門部、大学院のある滝井キャンパスと枚方市宇山町に教養部のある牧野キャンパスです。
「慈仁心鏡、すなわち慈しみ・めぐみ・愛を心の規範として生きる医人の育成」を建学の精神として掲げられ、また自由・自律・自学の学風のもと、学問的探究心を備え、幅広い教養と国際的視野をもつ人間性豊かな良医を育成することを教育の理念にされています。
教育の目標は、 1)科学的な観察力・思考力・表現力を身につける。 2)社会的・国際的に貢献できる医学知識と実践的医療技術とを修得する。
3)患者の痛みの分かる心をもち、患者の立場になって行動する態度を身につける。 4)自ら問題を解決する能力と生涯にわたって学習を継続する姿勢とを養う、とされています。
関西医科大学の特色
★ 少子化問題で定員割れの出る大学がある昨今、同大学の平成21年度入学者115名に対し入学応募者は1,576名と、厳しい狭い門です。
1) 6年間の学納金は2,970万円ですが、その安さは全国29校の私立医科大学でベスト10に入り学費を安くすることで、より多くの学生に受験の機会を提供し、入学後はよい医師に育てることを使命としておられます。
2) 国の方針により特別枠を設け、医師不足対策等に応えられるようなカリキュラムを策定されております。
3) 大学祭ではバザーやビンゴゲーム、ライブ等の催し物、附属枚方病院・滝井病院では公開講座の開催など地域との交流活動も活発に行っておられます。
4) 平成21年の医師国家試験では新卒94名中、92名が合格しました。
関西医科大学の教育体系(医師へのステップ)
★ 最初の1学年で医学生、社会人としての基本的な教養と専門教育を受けるために十分な基礎学力を牧野キャンパスで養います。
2学年から滝井キャンパスで専門教育が始まり医学の基礎となる最も重要な知識を修得します。3学年では問題を解決するに必要な知識と技術を自分で習得する“自己学習”が要求されます。
3学年から4学年にかけて臓器別系統別チュートリアル教育を受講します。4学年末には次学年から始まる臨床実習へ参加するための必要な医学知識が試される全国共用試験(CBT)と患者に医療行為を施す際に必要な技能・態度が試されるOSCE(客観的臨床能力試験)の2つの供用試験に合格しなければなりません。
5学年から関西医科大学附属枚方病院と滝井病院で臨床実習が始まります。病棟チームの一員として診療に参加し、より深く医学を学びます。
6学年では学内外の実習施設の臨床実習に参加します。 6学年の秋に卒業試験が実施されます。 医師国家試験に対する勉学も本格的になり、グループや個人学習の支援が用意されています。
医師国家試験に合格した卒業生は附属の枚方・滝井病院を中心とした臨床研修病院・施設で研修医として2年間の卒後初期臨床研修を受け、医師としての基本的診療能力の修得と人格の涵養に努めます。この間は研修に専念することが義務付けられている一方、標準的な生活に必要な給与が支給され、保険等の処遇も充実しています。
卒後初期臨床研修終了後は三つの進路があります。一つは各診療科・講座へ入局し医師免許取得後5~6年間の専門分野の専門研修を受け、各専門科の学会の試験等によりその分野の経験や学識・技術を有する医師として認定医・専門医・指導医の認定を受けます。これは5年毎の更新が必要で、常にその分野での専門性が求められます。二つ目は将来にわたり研究生活を志す場合、基礎・社会医学の講座に所属して研究を始めます。
三つ目は4年制の大学院の医学研究科コースに進む道が用意されています。
牧野キャンパス 教養部の概要
★ 牧野キャンパスは京阪牧野駅から徒歩約10分の枚方市宇山東町にあり、1学年115名が通うキャンパスです。 敷地は約3万㎡で公園と見あやまる緑に囲まれた敷地に講義、実験・実習・コンピューター各室、研究室、本館、図書館、体育館、学生会館、食堂などが点在しています。
スポーツの屋外施設としては、キャンパス内にテニスコートがあります。 教育科目は数学・物理学・化学・生物学・分子生物学・心理学・健康科学・英語・ドイツ語などの講義と物理学実験・化学実験・分子生物学実験・情報処理などの実習とセミナーがあります。
牧野キャンパスを見学させていただいて
●本館
鬱蒼とした樹木の奥に昭和初期様式の二階建ての本館があります。内部は長い廊下をはさみ事務室や研究室が並んでいます。外壁は蔦が絡んでより一層レトロな雰囲気を醸しだしています。 また、本館入口の左右にある石像が迎えてくれます。
●大講堂
昭和13年完成、築60年の講堂です。 中に入って目を奪われるのが15.5m×6.5mの楕円形の「双龍鳳凰」の天井壁画です。 これは明治21年府立大阪博物場内の美術館の天井を飾った壁画で、その壮麗さは当時の人々を魅了しました。
昭和21年に当初の建物が取り壊される際、大阪女子高等医学専門学校が譲り受けました。 110年前に製作されたとは思えない鮮やかさで保存されています。
壁画の下で手をたたくと“ 鳴き龍 ”のように多重反響現象が起こります。 普段は卓球や剣道の課外活動に使われ、入学式も毎年、この講堂で行われています。
●体育館
床に球技用の白線がひかれ、種々の室内スポーツができます。 2階の観覧席には大講堂の天井壁画と同時期に作られた飛天、天馬、四神、十二支の壁画22面のうち4面が額装で展示されています。
●図書館
大学創立60周年記念事業として平成元年に建設されました。 蔵書数は旧図書館と合わせ約6万冊です。 哲学、心理学、経済学、物理学、化学、生物学、体育学など多岐にわたっています。
閲覧室では110名がゆったりした空間で学ぶことができます。 グループ学習室が2部屋と、4台のパソコンがありインターネットが自由に閲覧できます。卒業生の寄付による「種の起源」初版本、バチカン教皇府立図書館編の新約聖書がガラスケースに展示されています。図書館は樹木や芝生で囲まれ静かな思索にふける場になっています。
●コンピューター室
実験実習棟にはコンピューター室が2部屋あります。 コンピューター室1には61台以上、コンピューター室2には30台以上のパソコンが整然と配置され情報処理の実習に供されます。
取材の感想
1)今回の取材で、医師になるまでの道程の厳しさを知りました。先ず崇高な使命感で臨む入学試験、4学年末に受ける全2つの共用試験(CBT・OSCE)、6学年の卒業試験と医師国家試験や2年間の卒後初期臨床研修など幾多の関門を通らなければなりません。また知識や技術だけでなく患者に対する態度や人間性も習得しなければなりません。
私たちはよく『あの先生はどうの、この先生はどうの』と品定めをしますが『経済的な条件だけでは決して医師になれない』ということを遅れ馳せながら改めて認識いたしました。
2)今回取材した教養部は広大な3万㎡の中でわずか115人の学生が学んでおられ、取材の間には、学生に出会うことはありませんでした。いかにゆとりあるキャンパスかを伺い知ることができました。
3)この教養部は、関西医科大学附属枚方病院に隣接した淀川湖畔に平成25年4月に新キャンパスを新設され、そこに移転される予定です。 この跡地は大学の施設として存続させるとお聞きしましたが、貴重な文化財として、また卒業生の心のふるさととして、更に牧野の象徴として永く親しまれる場所になりますよう希望したいと思いました。
4)本館は昭和初期様式の二階建、外壁には蔦が絡んでより一層レトロな雰囲気を醸しだし、創立80周年を迎えた歴史と伝統ある医科大学であることを痛切に感じました。
なお、関西医科大学の詳細は下記アドレスのホームページを参照してください。 http://www.kmu.ac.jp/
(取材:山添、藤田 レポート:藤田)
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牧野キャンパス校舎配置図
(2010年大学案内より) |