「目に青葉 山ホトトギス 初カツオ」の季節にしては少し肌寒い4月27日、摂南大学枚方キャンパス薬学部を取材しました。最初に薬学科の教授で薬学博士の稲田様と助手で薬学修士の邑田様のご案内で附属薬用植物園を見学しました。
その後6号館で薬学科の学科長・教授で医学博士の荻田様から薬学部の教育システム等についてご説明を受け後、6号館の臨床薬学教育研究センター、5号館の情報処理演習室等を講師で薬学修士の首藤様のご案内で見学しました。
摂南大学の概要
★ 1975年に工学部を寝屋川市に開設しました。2009年度の学部別学生数は寝屋川キャンパスに工学部1,985人、法学部1,019人、外国語学部1,047人、経営情報学部1,170人、枚方キャンパスに薬学部1,105人、合計6,326人です。
今井学長様は『学生の人間的な成長を基軸として、人間力・実践力・統合力を養い、自らが課題を発見し、解決することができる知的専門職業人の養成を目指しています』と大学案内書の中で述べられています。
薬学部の概要
★ 薬学部(枚方キャンパス)は、1983年に国道1号線沿い洞ヶ峠に接する丘陵地に開設されました。京阪樟葉駅からバスで約15分、JR長尾・松井山手駅からバスで約10分の所にあり、附属薬用植物園も含め総面積15万3千平方メートルという広大な面積があります。1号館は教授室、研究室、事務室、談話室。2号館は教室、図書室、食堂。4号館は教室、実験室。5号館は情報処理演習室、教室。6号館は実習室、実験室、演習室、研究室などです。
★ 薬学部は6年制一貫教育プログラム(2006年度から)で、『基礎教育からキャリア形成教育まで、そして科学者としての薬剤師の育成』を図り、チーム医療・地域医療・医薬品開発に貢献できる薬剤師の育成を目指しています。薬剤師になるために数学・物理・化学・生物等の基礎科目及び教養科目・専門科目を4年間でしっかり習得し、5年から6年は病院・薬局実務実習と臨床薬学演習等を学びます。薬剤師の国家試験は6年の最終・卒業近くに受けることができます。今年の試験は3月に実施され、摂南大学の合格率は全国平均を約14%上回って88%でした。尚1987年の1期生から2009年23期生まで4,689人の卒業生の総合格率は99%という大変輝かしい実績です。
★ 臨床薬学教育研究センター(6号館)は、2008年3月に最新の機器を備えて完成しました。病院や保険薬局での実務実習に備え事前教育に使用します。模擬薬局(病院薬局実習室と保険薬局実習室)や無菌製剤実習室、注射調剤実習室、服薬指導実習室、病棟実習室などを完備した実践的な施設です。「自動分割分包機」「全自動錠剤分包機」「薬剤用クリーンベンチ」等初めて見る珍しい機器が設置されていました。又、情報処理演習室では130台のパソコンが設置してあり、全学生にメールアドレスとパスワードが付与され自由に利用できます。
★ 薬学部の定員は1学年220名ですが2006年から6年制になり、現在は5~6年生はおりません。在籍生の男女比は6対4で、ここ数年は男性の比率が増加しているとのことです。卒業後の就職先は薬剤師の資格を有するため極めて有利で薬局40%、病院20%、製薬会社20%、その他大学院や研究所等20%となっています。
薬学部附属薬用植物園の概要
★ キャンパス北側グランドから山手幹線道路下のトンネルを抜けた樹木園Ⅰと国道1号線沿いの樹木園Ⅱ、グランド東側の温室・標本園に区分管理され、総面積は約1万平方メートルあります。主に栽培してる植物は日本薬局方収載生薬・漢方処方用薬・民間薬などに用いられている薬用植物及び香料・食料・染料などに用いる有用植物や有毒植物類です。約1,500種類が栽培管理されていますが新たな薬用資源開発のために研究材料として学内外に提供するとともに、日本植物園協会、植物園自然保護国際機構(BGCI)の会員となり、絶滅危惧植物の保全にも貢献されています。※BGCI
⇒Botanical Gardens Conservation International
★ 日本の薬の公定書である「日本薬局方」収載の医薬品は、生薬及び生薬成分由来の薬と合成薬の2種類に分けられますが、生薬及び生薬成分由来の薬が1/3、合成薬が2/3の割合です。生薬は自然の薬草や樹木から作られ、生薬を組み合わせた漢方薬がその代表です。
ご説明頂きました植物名の用部と用途を一部ご紹介します。
・ユリノキ(アメリカの代表的な蜜原植物)
・キハダ(樹皮=苦味健胃整腸、打撲傷)
・ユズリハ(樹皮と葉=駆虫剤)
・トチノキ(樹皮=下痢止め、種子=食用)
・ウド(根茎=解熱、強壮、茎=食用)
・ツノハシバミ(果実=食欲不振、病後回復)
・ゴボウ(果実=利尿、鎮痛、解毒、根=食用)
・キジュ(果実と根=白血病) ・ホオノキ(樹皮=健胃消化、鎮咳)
・タイム(茎葉=香辛料、防腐、鎮咳) ・ステビア(葉=甘味料)
・カンゾウ(根とストロン=甘草、潰瘍、去痰、葛根湯)
・レモングラス(葉と茎の精油=レモングラス油、香料、浴湯料)
その他約30種の薬草・樹木の説明をいただきました。
ご案内いただいた邑田様の薬草・樹木に関する知識は大変幅広く豊富で、効能・味・匂い、エピソード等止めどなくこんこんと湧き出る泉の如くご説明いただき感服いたしました。又、薬草園でも栽培されている生姜・よもぎ・カリンを使ったのど飴とドクダミやレモングラスを煎じたお茶、柚子とカリンのジャムを乗せたクッキー、チョウセンゴミシの果実を水に浸した飲み物等を試食させていただきました。
この薬用植物園は、年3回一般公開(見学会)をされていますので、ご関心のある方は参加されてはいかがでしょうか。
詳しくは、下記のホームページをご覧ください。
・摂南大学のホームページ http://www.setsunan.ac.jp/
・摂南大学薬学部のホームページ http://www.setsunan.ac.jp/~pharm/
・薬用植物園のホームページ http://www.setsunan.ac.jp/~p-yakuso/
取材後の感想
◆ 数十種類の薬草・樹木の効能・味・匂い、そしてエピソード等を詳しく説明していただき、初めて聞く珍しい薬草・樹木も多く、楽しく勉強をさせていただきました。
◆ 普通の家庭にもある身近な植物に、薬効があるものが意外に多いというを知りました。近代植物園が世の東西を問わず、薬草園からスタートしたと聞き、家庭で栽培されているものも、自然に薬草が多くなってきていることかと思いました。
◆ 化学的に合成された薬品が圧倒的に多いと思っていましたが、意外に生薬関係の薬が約30%と多いことにも驚きでした。野菜や果実は栽培されて、食用に供されている訳ですから、薬品も化学的合成が難しいものもあり、自然・人工栽培で得るものがあっても当たり前かと思いました。食品も薬品も、最初に試みた先人の知恵と勇気に改めて感服しました。
◆ 地球誕生から46億年、私たちは、今尚病気との闘いを続けています。木の根や皮を薬にした時代を経て、西洋医学や薬がすばらしく進歩した今日ですが、まだまだ多くの難病があります。若き学生の皆様に大いに期待したいと思います。
◆ 西洋医学の薬は直接菌を殺すが、漢方薬は体力を付けて菌を殺すのだそうです。この違いを上手に使い分ける事が大切なようです。敵を知り己を知れば百戦危うからず(孫子)、この言葉は、全てに通用するような気がしました。
(取材:井須、大熊、金箱、岸本、吉川、冨松、日垣、藤田、山添 レポート:金箱)
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