タイトル(第22回)

"少女時代の夢を「桐塑人形」に乗せて"

枚方市楠葉並木 在住 神田 和美様
2010年3月10日 取材

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”林 駒夫”重要無形文化財認定祝賀会 「桐塑人形」を横に正座される神田さんご夫婦 見事な桐塑人形の一室”神田邸の一室”
「林 駒夫」先生の重要無形文化財認定祝賀会にて
「桐塑人形」を横に仲良く正座される”神田さんご夫婦”ご自宅にて取材時撮影
見事な桐塑人形の一室神田邸
(1)取材訪問
 今回の夢中人は、枚方南北支部のホームページに夢中人記事を掲載するようになって、初めての女性夢中人となる「神田和美」さんをご紹介します。 ご主人は元松愛会会長の神田卓明さんです。 夢中人取材担当委員4名で、京阪電車樟葉駅の近くにある高層マンションのご自宅にお訪ねしました。お訪ねしてまず感じたのは、 さすがに奥様が夢中になっておられるだけに、お部屋の一室に「人形」が見事に飾られており、そこが床の間化していることでした。 お話を伺う内に分かったのは、我々が最初に伝え聞いていた「木目込み人形」と言う表現が間違っていたことでした。神田さんが実際に夢中になっておられる人形は、 「桐塑人形」(とうそにんぎょう)と呼ぶのが正しいと言うことでした。

(2)「桐塑人形」を始められた動機
 神田さんが人形作りに夢中になられた動機は、少女時代にあるお友達から雛まつりのお誘いを受け、お友達宅で始めた見た、雛人形のお内裏さまが立派であることと、 ご馳走を食べたり、踊ったり、ゲームをしたりの楽しい一日を過ごしたことで、お人形が大変好きになられたことだそうです。それ以降人形を見ると欲しくなったが買って貰えず、学校を出て仕事に就いてから、仕事の帰りや休みに人形店を巡るなどしていたとのことです。それから時も立ち、会社を退職され暫くは何もされていなかったようですが、平成9年のある時、たまたま、知人に紹介された方が、今も師事している重要無形文化財「桐塑人形」保持者(人間国宝)の“林 駒夫先生”であったことと、雛人形に対する少女時代の思いがきっかけで、「桐塑人形」にのめりこんで行かれたのだそうです。

(3)活動
 ”林 駒夫先生“を紹介されてから13年間、京都の林先生のお宅には、今も月3回のペースでお邪魔して、指導を受けておられるそうですが、その活動を通じて数々の「桐塑人形」を作成してこられたそうで、その数は20数体にも及ぶそうです。まず、「桐塑人形」とはどの様な作り方をするのかをご説明しなければなりません。今回の取材に先立ち、「桐塑人形」の作成についてDVDを見ながらご説明頂きましたので、その内容をご紹介します。
「桐塑人形」とは
 桐塑人形は,桐の木で基本の形状を彫刻し、その上に“桐の木粉(おが屑)と生麸糊(しょうふのり)を練りあげた弾性のある粘土状の素材(桐塑と言う)を塗り素地を作り、 人形を制作する技法だそうで、桐塑は自由に肉付け、乾燥を繰り返し、木材同様に彫刻することにより色々な造形が可能である。仕上げは、造形されたものの上にハケで地塗りし仕上げる、 胡粉仕上げ(ごふんと読み、牡蠣の貝殻を砕いて水で練った粘土状のもの)、そして胡粉による置き上げ、中塗りと言う工程をなんども繰り返して、ペーパ仕上げし、彫刻刀でさらえて仕上げる、 そこに和紙貼,布貼,彩色などの各種の精緻な技法が駆使され完成されます。その源流は、江戸時代初期に雛人形などの頭部や手足を作った練物の技法にあり、表現の豊かさから、 現在では「創作人形」の重要な分野を占めているのだそうです。 桐塑人形は創作人形と言われるように、頭の中に作るべき人形を想像し頭に描きながら作成されるもので、実に想像豊かな創作する人形と言えます。

(4)作品の紹介
平成10年 一門夏の会に初出展 題名「佳日」
平成10年神田さんの処女作一門夏の会 四条「田中弥」にて開催 題名「佳日」”かじつ”で出展
平成13年 枚方工芸展に出展 人形名”斑鳩蒼天”
平成13年第4回枚方工芸展に人形名「斑鳩蒼天」”いかるがそうてん”で出展
平成14年 枚方工芸展に出展 人形名”吉祥果”
平成14年第5回枚方工芸展に人形名「吉祥果」”きっしょうか”で出展
平成15年 枚方工芸展に出展 人形名 左”胡蝶”右”迦陵頻加”
平成15年一門展が八坂神社「常磐殿」にて開催 人形名 左「胡蝶」”こちょう” 右「迦陵頻加」”かりょうびんか”で出展
 平成15年 一門春の会に出展 人形名”龍おどり”
平成16年一門春の会が京和菓子老舗「宝泉」にて開催 人形名「龍おどり」”りゅうおどり”で出展
 平成16年 枚方工芸展に出展 人形名”歌垣”
平成16年第7回枚方工芸展に出展 人形名「歌垣」”うたがき”で出展
平成16年 枚方工芸展に出展 人形名”御所人形”
平成16年第7回枚方工芸展に人形名「御所人形」”ごしょにんぎょう”で出展
平成17年 枚方工芸展に出展 人形名”花かげ”
平成17年第8回枚方工芸展に人形名「花かげ」”はなかげ”で出展
平成17年 枚方工芸展に出展 題名「交野の春」人形名”在原業平”
平成17年第8回枚方工芸展に題名「交野の春」人形名「在原業平」”ありはらのなりひら”で出展
平成18年 枚方工芸展に出展 人形名”童雛”
平成18年第9回枚方工芸展に人形名「童雛」”わらべびな”で出展
平成18年 枚方工芸展に出展 人形名 中央二体”立雛”左右一対”犬筥”
平成18年第9回枚方工芸展に人形名 中央二体「立雛」”たちびな” 左右一対「犬筥」”いぬばこ”で出展
平成19年 左 枚方工芸展 題名「休日」人形名”ゴルフ” 右 一門夏の会 人形名”韓国童子”
左右共平成19年の作品、左第10回枚方工芸展に題名「休日」”きゅうじつ”人形名「ゴルフ」、右人形名「韓国童子」”かんこくどうじ”で一門夏の会に出展、祇園の石塀小路「和田ギャラリー」で開催
平成21年 一門展に出展 人形名”御所人形”
平成21年の一門展が嵐山「常寂光寺」で開催 人形名「御所人形」”ごしょにんぎょう”で出展
平成22年 一門雛の会に出展 人形名”明日香雛”
平成22年一門雛の会が東京三越本店で開催 人形名「明日香雛」”あすかびな”で出展
平成22年 一門雛の会に出展 人形名”和楽雛”
平成22一門雛の会が東京三越本店で開催 人形名「和楽雛」”わらくびな”で出展
(5)現在と今後の活動
 神田和美さんの現在の活動は、林一門の活動である展示会に出品することと、枚方工芸会主催の「ひらかた工芸展」に毎年出品することだそうです。 その他にも色々展示会はあるが、現時点ではそれらに出品し入選したいとか、作った物を売りたいと言うことは全く考えていないとのことでした。そもそも「桐塑人形」の楽しさは、 題材に基づき色々考えて作る「創作人形」である所にあり、その創作することの楽しさを、今後とも続けられれば良いとのお考えでした。

 「林 駒夫」(はやし こまお)先生のプロフィール
「桐塑人形」の重要無形文化財保持者(人間国宝)
昭和11年10月22日 京都市に生まれ 高校卒業後、十三世・面屋庄三(「三つ折人形」の重要無形文化財保持者)に師事し人形の制作技法を、また北沢如意に能面打ちを学び、さらに平中歳子に師事して「桐塑人形」の制作技法を修得されました。日本伝統工芸展で総裁賞を受賞、平成14年に重要無形文化財「桐塑人形」保持者に認定され、平成16年に紫綬褒章を、さらに平成21年には、旭日小綬章を受賞されています。

取材:鬼頭、梅原、吉川、大熊  HP作成:大熊

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