〜 図書館銀座に暮らす 〜
〜はじめに〜
  教育・図書館関係者の間では、滋賀県のことを『図書館王国』、湖東地域のことを『図書館銀座』と言います。
  私は昭和55年(1980年)に、東近江市(旧八日市市)に転居して以来、この『図書館銀座』に住んでいます。
  そして、非常に質・量ともに高いサービスを受けています。
 
  市民は、市町村合併のおかげで、旧1市6町の図書館を利用できるようになりました。
  私がよく利用する八日市図書館、能登川図書館を中心に紹介します。
  左下の写真は八日市図書館です。
  昭和60年(1985年)に市の中心部の小学校跡地にできました。

  初代の館長は大阪からヘッド・ハンティングで招いた西田さん。 
  こだわりと信念を持って理想の図書館にしてくれました
。 
  「本の提供、貸出しでなく、情報提供をする」
  「活字に特化する(AVは、民間で借りられるし、置けば職員が余分に必要だから)」
  「絵本は子供でも判るように表紙を見せて置く」
  「びわ湖があるので、環境関係の本を多く置く」
  「雑誌は多く」「休憩コーナーでは、自販機でないコーヒーを提供する」などです。

    図書館を利用して驚くのは、借りる時、返す時に職員が「ありがとうございました」と言うことでしょう。
   開館後、間もなくの頃、全国からの視察者が見学に来ました。
   また文部科学省の「図書館の人々」のモデルにもなりました。
   雑誌『アミューズ』では全国の図書館ベスト10に現東近江市の3館が選ばれました。
     
       
八日市図書館            2階から見たところ 
                                                          
                 
    絵本は表紙が見えるように置く          雑誌も多い


どの図書館にも、パソコン関係の本が多くあります。

ちなみに、私はパソコンで判らないことがあったら、次の順で調べます。

 @ヘルプで探す。
 Aネットで調べる
 B本、雑誌で調べる
 C詳しい人に訊ねる

このうち、Bでは図書館の豊富な本に、何度も助けられました。


八日市図書館の2階には「風倒木」という喫茶コーナーがあり、100円でコーヒーや梅こぶ茶を飲むことができます。

奥には「ぶっくる」(本のリサイクル)というコーナーがあり、不要の本、寄贈の本を安く売っています。

どの図書館にもギャラリーがあり、無料で借りることができます。
パナソニック松愛会の会員や、パナソニックの社員で利用している人もいます。

左下のペン画は、小畠由佳里さんという聴覚障害を持つ人が、この2階を描いたものです。この方は、八日市図書館のギャラリーでで開いた個展を契機にプロの画家になりました。 

この小畠さんを見出したのが、滋賀県を多く描いている、ブライアン・ウィリアムズさんです。

このコーナーでは、ウィリアムズさんの絵や、「オゴジョ」などの動物あるいは風景の写真の貸し出しもしていて、家で飾ることもできます。

あと、紙芝居の貸し出しもしていますし、紙芝居、大人向けの映画、子供向けの映画と色んな催しをやってくれます。 



左の写真は能登川図書館です。大きな博物館も併設されています。最近、人口が増えていますので、活発です。 

能登川図書館の「バオバブ」と名付けられたコーナーです。
ここには医学関係の本が集中的に集められています。病名や症状ごとに 分類され、使いやすくなっています。
高齢化が進む中で、市内の7つの図書館のうち、利用者が多くスペースに余裕があるので、ここに集めたのでしょうか。

能登川図書館には、色んな読書コーナーがあります。畳の部屋や、親子で読ませやすいコーナーもあります。左の写真は人気のある、能登川にちなんだ水車の見えるコーナーです。

他の図書館でも、季節の良い時にはテラスで読めるようにしてあるところもあります。 
   

リニューアルした愛東図書館 静かなたたずまいの永源寺図書館 ゆったりした蒲生図書館

          
 小さいが蔵書の多い五個荘図書館      木造のような落ち着きのある湖東図書館
   
なぜ、滋賀・湖東は図書館が良いのか?
 聞いた話ですが、政治家の武村正義氏が滋賀県知事の時、図書館行政を充実させるために、第一人者の、東京都日野市立図書館の前川恒夫氏を滋賀県県立図書館長として招聘しました。この時、お願いにあがったのが、当時の滋賀県副知事、前川さんだったそうです。それこそ、三顧の礼をもって来ていただいたのです。
 そして、県立図書館はもとより、県内の公立図書館の充実にも力を発揮してもらいました。
 武村さんは、元は八日市(現東近江)の市長でした。武村さんの県知事、2期目は無投票だったので、備えていた選挙費用が余り、これを図書館の充実に使ったとも言われています。

 東近江市では、以前は太郎坊に近い山の麓の小学校跡に図書館がありました。市の中心部の南小学校跡地に新しい図書館ができたのが、1985年です。
 行政も偉かったと思います。「お金は出すが、口は出さない」という風に利用者には思えます。西田館長の意思と行動力を尊重したのでしょう。素晴らしい図書館になりました。  
   
東近江市だけでなく、近隣の図書館を含めて上に書いた以外のサービス、特徴について紹介します。

どの図書館も、大人向け、子供向けの映画会、絵本の読み聞かせ、紙芝居、絵画・写真・書道・手芸の展示や講習会をやってくれます。
また、「ライブラリー・コンサート」と称して、色んな楽団、楽器の演奏も無料でやってくれます。
特に甲西図書館では、継続して毎年何回ものコンサートがあり、よく行きました。

博物館などとの併設もあり、これも楽しめます。

 能登川:博物館併設、色んな企画の展示が多い。
 愛知川:郷土工芸の「びん細工手まり館」を併設。 講習会はいつも満員。
 近 江:「はにわ館」を併設。
 び わ:文化センターを併設。
 野 洲:総ガラス張り、自然採光の図書館。
 
〜おわりに〜

 
転勤で大阪から滋賀県に移り住んで5年後に八日市図書館が開館しました。
 以来25年にわたって、その心地良く、充実したサービスを享受してきました。

 不思議なことに、仕事で使える本がたくさんありますし、新聞や雑誌の書評を見て読みたいと思った本が既にあったりしました。聞けば、毎週「選書会議」をやっているとのこと。リクエストされた本も利用者が少なければ県立図書館から回してもらうなどのきめ細かい運用で、予算を有効に使っているようです。
 どこの図書館でも古くなった本や、寄贈を受けた本を安く売っています。私が単身赴任から帰任・帰宅した際に溢れていた本も引き取ってもらい、有効に活用してくれました。
 
                      

                    2011年9月



                          (実 践 者) 東近江市在住  太田 吉光