〜栗東の古墳めぐり〜栗東の歴史より〜

T.はじめに。〜栗東の古墳マップ
○ 滋賀県湖南の栗東市のウオーキングコースの岡平地中央部の小山に地山古墳名の石碑、その南に岡遺跡碑
  があり、南に下戸山古墳と小槻大社古墳群が続いている、更に東方向には和田古墳群があります。
○ これらの古墳がいつ頃のものなのか等、栗東の古墳紹介をします。 
栗東の古墳マップはこちら

U.古墳の出現
○ 土を盛り上げて墓をつくる風習は、弥生時代の方形周溝墓にみられたが、箸墓古墳(卑弥呼の墓では?)
  のように“全長278m・後円部高27m”の大規模な盛土を持つ墓の出現は三世紀後半から四
  世紀にかけてのこととされています。
○ これ以降七世紀後半ごろまで、大小おびただしい数の墓が、全国的に築造されるのであるが、この種の墓
  を“古墳”とよび、この間を、前後の時代と区別して古墳時代と称している。
○ 栗東には現在80基に上る古墳の存在がしられている、横穴式石室を持つと見られる後期古墳が80%を
  占めている。

方形周溝墓
V.古墳出現の背景
○ 中国の漢帝国解体後の東アジア世界の分極化と、それに刺激を受けた周辺諸国の自立的発展の動向が、
  大きな要因になっているといえよう。
○ すなわち、このような国際環境のなか、大和王権を中核とする新しい政治秩序の形成を目指した列島内で
  そのバックボーンとして生み出されたのが"古墳“と”祭祀“であったといえよう。
*古墳の形
W.栗東の古墳
1.岡山古墳・・六地蔵の丘陵に築かれた栗東最古期の古墳。
       @型は円墳
       A4世紀前半代の古墳に含まれる。
       B主な出土品・・中国製の天王日月獣文帯三神三獣鏡、櫛歯 文帯・盤龍鏡各一面。

天王日月獣文帯三神三獣鏡
盤龍鏡
2.亀塚古墳・・出庭に築かれた栗東最古期の古墳 
       @型は前方後円墳とされる。
       A4世紀前半代の古墳に含まれる。
       B主な出土品・・国産の三神三獣鏡一面。
     (解説)・古墳発生期の最古式の古墳が築造されていたことは、この地域(野洲川左岸地)の
         首長が、早くも大和王権と同盟関係があったことを示しているといえよう。

亀塚古墳

国産の三神三獣鏡一面
3.下戸山古墳
       @帆立貝式の前方後円墳
       A立地や墳形から5世紀代を下ることはない。
       B主な出土品・・埴輪片等

下戸山古墳

地山古墳
4.地山古墳
       @周溝含む径65mの規模の円墳で県下でも最大級
       A6世紀初頭の前後
       B主な出土品・・須恵器等。   
(解説)上記金勝川左岸地域は、この地の豪族小槻山君の氏神小槻大社が鎮座し、地山古墳の東側で栗太郡衙とみられ
    る大規模な官衙跡・・岡遺跡・・が発見されている、この地域の重要性をさら
    に高めている。


岡遺跡出土品「握手付中空円面硯」

岡遺跡出土品「須恵器類」
5.大塚越古墳
       @前方後円墳で全長75mの規模を持つ。
       Aおおよそ五世紀前半代の築造
       B主な出土品・・中国製の二神二獣鏡一面(吾作明竟□□三□競徳序道配像萬疆子孫番昌の銘)国産の素
        文鏡一面・ 巴形銅器

二神二獣鏡


国産の素文鏡一面


巴形銅器
6.椿山古墳
       @帆立貝式の前方後円墳周溝を含めると全長135m以上の規模帆立貝式では県下最大、全国的にも上位。
       A5世紀中頃の築造 
       B主な出土品・・三角板革綴短甲一領・鉄剣九口・鉄鏃120本円筒埴輪。

椿山古墳
7.新開古墳 
       @北側に二号墳、南側に一号墳で径35m前後の円墳
       A4世紀末〜5世紀中頃
       B主な出土品・・北棺から盤龍鏡(径13.7cm)等。

       当古墳の出土遺物は 昭和61年度国の重要文化財になった。


盤龍鏡

変形神獣画像鏡

三角板革綴衝角付冑

小札鋲留眉庇付冑
 

三角板革綴短甲

横矧板鋲留短甲

鉄地金銅透彫鏡板付轡

鉄板装木鞍一個

木芯鉄板被輪鐙

舟形埴輪

家形埴輪

円筒埴輪
   (解説)・栗東の首長の勢力が、やや衰退し始める6世紀の中頃になると、古墳文化に大きな転機が訪れる。
     ・すなわちそれまで首長とその周辺の一族に限定されていた古墳被葬者が大幅に拡大・増加しているのである。
     ・埋葬施設についても、従来の竪穴式石室や粘土槨に変わって、新しく朝鮮半島から伝わった横穴施設を採用し
      数次にわたる追埋葬も一般化するのである。
     ・栗東においても、60基近くの後期古墳が知られる。
8.和田山古墳群・・栗東市出土文化財センターが置かれている。
       @円墳九基
       A6世紀後半に中心があるようだ。
       C横穴式石室をもつ。
       D主な出土品・・若干の須恵器と他多数の遺物が出土。

横穴式石室

装飾品 耳環・空玉

須恵器
9.小槻大社古墳群小槻山君一族を被葬者とする後期群集積と考えられる。恐らく横穴式石室を持つとみられる。 
 (解説)・後期古墳時代には古墳を築造できる階層が大きく拡大し、各地域には有力者
      が台頭し栗東地域の首長権にも変化が生じていることがうかがえる。
X.おわりに
  以上のような古墳には、どのような首長豪族が埋葬されたのか、そして栗東の歴史は日本の国づくりにどう係わってきた
  のか、身近な栗東の歴史に大変興味ぶかいものがある。
□ 掲載文献と資料

○栗東の歴史 発行所 栗東町役場 
     1.第一巻 古代・中世  2.第四巻 資料T
○栗東市出土文化財センター展示・収蔵資料一式
     栗東市教育委員会より資料提供をうける。
○栗東歴史民族博物館展示資料
     @新開古墳群パネル及び出土資料 A岡遺跡出土資料      栗東歴史民俗博物館許可済み


取材 2007年4月 松本 尚