No.1 近江八景
近江の国滋賀県には、日本一の琵琶湖を持ち古くからの名所旧跡、多くの歴史遺産を持っております。これから定期的にこれらの名所旧跡、歴史遺産などを皆様にご紹介したいと思っております。
最初は琵琶湖にちなみ近江八景をご紹介いたします。近江八景は大津随一の名勝「近江八景」 成立は、明応9年(1500)8月13日に近江守護六角高頼の招待で、近江に滞在した公卿の近衛政家が近江八景の和歌八首を詠んだことが始まりだと言われています。この八景は、中国の宋や元の文化が室町時代に移入され、京都の禅宗寺院を中心に詩文や水墨画が流行していたときに、その題材になった「瀟湘八景(しょうしょうはっけい)」でありました。中国湖南省にある瀟水と湘水の流れを集める洞庭湖の名勝のことで、中国では名高いところです。
近江八景は、洞庭湖になぞられた琵琶湖の南部を中心に選定され、全国にある八景の中でも、観光のルーツと呼ばれるほど素晴らしい景色です。浮世絵第一人者の歌川(安藤)広重(1797〜1858)の作による、浮世絵『近江八景』には次のの八景が美しく描かれており、その景色は今にも受け継がれております。
・石山の秋月
石山の秋月
一条の月光を友として、源氏物語の想を練った紫式部。
瀬田の清流から霊山石山寺あた りに秋月の神秘。

・勢多の夕照
勢多の夕照
照り輝く瀬田の透き水の豊かな流れ。
唐橋に映えて夕照のこの世ならぬ風情。
・矢橋の帰帆
矢橋の帰帆
湖上に散華する白い帆の渡船の群れ。
風光際立つ矢橋に、躍動した人々の一大叙情詩。
・粟津の晴嵐
粟津の晴嵐
散るか散らぬか、湖上にたなびくうす霞。
松並木の湖畔の往還にそっともやの風趣が。
・三井の晩鐘
三井の晩鐘
街なみを、そして湖上をわたる名鐘のひびき。
哀調を帯びた音色は日本三名鐘の余韻。
・唐崎の夜雨
唐崎の夜雨
糸をひく春雨か、夏の夕べの驟雨か。
湖上にかかる唐崎の松がおぼろに煙ぶる。
・堅田の落雁
堅田の落雁
冴え冴えとした冬の湖上の、優雅な満月寺(浮御堂)の姿。
列をなして飛ぶ雁の群れとの美しいコントラスト。
・比良の暮雪
比良の暮雪
晩秋から雄大な比 良の峰々を彩る白銀のヴェール。
あかね色の夕陽に染めあげられた南画調の山稜。
画像提供:大津市歴史博物館